東洋医学から考える冷え性
東洋医学の視点から冷え性を考えると、身体に寒邪(かんじゃ)という邪気が侵入し留まってしまった状態と考えることができます。寒は風(ふう)・寒(かん)暑(しょ)・湿(しつ)・燥(そう)・火(か)の六気(ろくき)の一種なのですが、季節はずれの寒さやあまりにも寒さが長く続くなどすると寒邪という邪気に転化してしまうのです。冷え性は長く続く冬の寒さや春先の不安定な気候、夏場に長時間冷房にあたるなどして寒が邪気に変わり、身体に侵入し留まっているために害をおよぼしている状態であると考えることができます。東洋医学の世界ではこうした状態を身体に蓄積された冷え、ということで積冷(せきれい)と呼ぶこともあります。
このように寒邪が体内に侵入してしまう状況では、身体を邪気から守る陽気(ようき)の働きが弱くなっていると言えるでしょう。陽気は食べ物から作られるエネルギーであり、体表面を流れ体温を低下させないようにする機能や、皮膚を収縮弛緩させることで寒邪の体内への侵入を防ぐなどの働きをしています。現代で言う免疫機能に似た働きを担っているのです。
冷え性であるということは身体の防衛機能が低下していることを表しているため、冷え性だけでなく様々な邪気が身体に侵入してくる可能性が高いと考えることができます。そのため、身体を守る陽気のエネルギーを充実させることが症状の改善だけでなく、他の様々な症状の改善にも役立つことと思われます。
冷え性に効くツボ
大椎は身体の防衛機能である陽気を司る
身体の防衛機能である陽気をコントロールしているとされるツボを『大椎(だいつい)』と言います。大椎では全ての陽の気が交差するため、ここをお灸などで温めると全身を流れる陽気を充実させることができると考えられています。
大椎は第七頚椎と第一胸椎の棘突起の間にあります。首を前に傾けた時に首の付け根に飛び出る椎骨、それが第七頚椎棘突起でありその真下のくぼみに大椎が存在しています。
■心身にエネルギーを運ぶ血を回復させる三陰交
三陰交は血の循環を改善すると考えられている
また、脾の経絡に属している「三陰交(さんいんこう)」も冷え性の改善に効果的であると考えられています。三陰交は生理痛をはじめとした婦人病などの治療にもよく利用されるツボですが、全身の血(けつ)の循環を改善する効果があると言われています。
血は西洋医学でいう血液と似たものですが、肉体を栄養するだけでなく精神活動にもエネルギーを与えると東洋医学では考えられています。血の循環が改善するということは心身にエネルギーが行き渡り邪気が体内に侵入を防ぐことができます。こちらもお灸などで温めることが効果的だと考えられます。
運動習慣を身につけることや春先でも暖かい服装を心掛けるなどして体温を低下させない要努力することが大切なのはもちろんですが、こうしたツボを利用して冷え性の改善・予防をされてみてはいかがでしょうか。