ポルトガルの栄光を支えた世界遺産「ポルト歴史地区」
ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア側からポルトの歴史地区(リベイラ地区)を眺める。手前の川がドウロ川で、すぐ下流で大西洋に注いでいる。穏やかな川と海に挟まれたポルトは天然の良港で、古代から港として利用されてきた
今回はポルトの二大名物トリッパとポートワインを絡めつつ、ポルトガルの世界遺産「ポルト歴史地区」を紹介する。その過程で世界遺産「アルト・ドウロ・ワイン生産地域」にも触れてみたい。
ポルトで味わいたいふたつのグルメ
ノッサ・セニョーラ・ド・ピラール修道院から眺めたドン・ルイス1世橋とポルト歴史地区。橋はエッフェル塔の設計者であるエッフェルの弟子、テオフィロ・セイリングの設計で、上部の長さ約395m、高さ約45mを誇る
トリッパ。海と山に囲まれたポルトガルは食材が豊富。あっさりした味付けの料理も多いが、このように長時間煮込む手間暇かけた料理も少なくない
ポルトのトリッパの定番と言えるのが、豆と一緒に煮込んだ名物「トリッパ・ア・モーダ・ド・ポルト」。トマトやハーブ、ワインで臭みを抜き、長時間煮込んでトロトロになったトリッパは赤身では味わえない滋味にあふれており、ポルトガルの赤ワインとの相性も抜群だ。
教会、博物館、カタコンベから成るサン・フランシスコ教会。新世界からもたらされた黄金に覆われた礼拝堂は見事だが、内部撮影禁止
これがデザートワインに最適なのだ! 甘いワインとしてはアイスワインや貴腐ワインが知られているが、それら以上の甘さ、約20度という高い度数、にもかかわらず残るブドウの深い味わい。特にデザートが苦手な男性にオススメだ。
実は、トリッパとポートワインこそポルトガルの栄光のしるし。その歴史を知れば、味わいは数段広がるはずだ。
ポルトガルの栄光を支えた料理 1.トリッパ
クレリゴス教会。隣接して立っているクレリゴスの塔はポルトの象徴で、ポルトガルでもっとも高い塔となっている。登ればポルトが一望でき、彼方に大西洋を望むことができる
クレリゴスの塔から大西洋を望む。川沿いの土地は肥沃で水の確保も簡単。外洋も近いということで、ポルトは紀元前から港として繁栄した
15世紀はじめ、イベリア半島(現在のスペインやポルトガルがある半島)全域でキリスト教諸国による領土回復運動=レコンキスタが進んでいた。しかし、北アフリカのイスラム勢力はジブラルタル海峡を通じてイベリア半島のイスラム諸国を援助していたため、なかなか打ち破ることができなかった。
ボルサ宮の前に広がるエンリケ航海王子広場と王子の立像
セウタ攻略に際して、ポルトの人々は出港する船団に腐りやすい内臓を取り除いた牛肉と赤ワインを提供した。そして勝利を祈りつつ、残った内臓でトリッパを作って食したという。人々が自称するトリペイロという言葉にはこうした誇りが込められているのだ。
アフリカに渡ったエンリケは、西アフリカにあるという「黄金の国」の伝説や、東にあるという幻のキリスト教大国「プレスター・ジョンの国」伝説、そしてインドへと通じる航路が存在するという伝説を耳にして、海洋進出を加速させる。