東洋医学から考える腰痛とその分類
東洋医学の視点では、痛みは冷え・気血の停滞・熱が原因で起こるものと考えられています。これに加えて腰部は腎(じん)の生気が流れ込む「腎の府」と言われ、腎の気の影響を強く受ける部位でもあります。これらをあわせて考えると、東洋医学的には腰痛は大きく3つのタイプに分類されると考えられます。- 寒湿(かんしつ)の邪によるもの
- 腎の気の不足によるもの
- 血(けつ)の滞りにより熱がこもっているもの
腰痛に効くツボ
■寒湿の邪による腰痛の原因と効果的なツボ
命門は名前の通り「命の門」であると考えられている
寒湿の邪による腰痛は、寒く湿気が多い環境に長くいることが多かった場合などに、体内に寒湿が侵入し腰部に留まることにより気血津液(きけつしんえき)の循環を遮ることが原因と考えられます。この寒湿タイプの腰痛の特徴は温めると楽になることや腰痛と同時に足がむくむこと、身体が重くだるい感じがすることなどが挙げられます。
こうした症状の場合、第二腰椎棘突起と第三腰椎棘突起の間にある「命門(めいもん)」というツボにお灸などをすえて温めることで寒湿の邪を取り除くことができると考えられます。命門はその名の通り命の門であり、命の源である先天の気(せんてんのき)が宿るところと言われ、そこを温めることで人間本来の持つエネルギーを回復させることができると考えられるのです。
■腎の気の不足による腰痛の原因と改善方法
腎兪は五臓のひとつ腎の経絡を整える
腎の気が不足することでも腰痛は起きます。腰部は「腎の府」と呼ばれるほどで、言わば腎の気が収まる場所です。そのため、腎の気が不足することで腰部自体も気血津液が行き渡らない状態となり、痛みが発生すると考えられます。精神的なストレスや小食、過剰な性生活などが腎の気の不足の原因になります。
腎は食物から得たエネルギーである後天の精気を受け身体を成長させるなど全身に関わる役割を持つため、このタイプの腰痛は腰だけでなく足もだるく感じ、頭がふらつく、耳鳴りがする、身体を動かすと悪化するなどの特徴を示し慢性化すると骨粗しょう症の原因になると考えられています。
腎の気が不足して起こる腰痛には、ウエストの高さにある背骨(第二腰椎棘突起)から指二本分外側にある「腎兪(じんゆ)」というツボを優しくマッサージすることで腎の気を補うことができるため有効だと言われています。
■血の滞りで起こる腰痛に効果的なツボ
血海は腰部の血の流れを改善すると言われる
血の滞りにより起こる腰痛は、イライラしすぎることで肝(かん)の気を傷つけることや脂っこい食事を摂り続けること、体液である津液が体外に出てしまい血液がドロドロした状態になることなどが原因と考えられます。腰を押すと硬いしこりがあり、そこを押すと刺すように痛み、動かすことでその痛みは増悪し、寝ているあいだ痛みは軽減しますが、腰がうずくように感じるといった特徴を持っています。
こうした症状の腰痛には膝を伸ばして力をいれたときに、膝の内側のくぼんだところの上端にある「血海(けっかい)」をマッサージすることで腰部の血流が改善され、痛みが軽減されると考えられます。
東洋医学における腰痛は、その生活習慣や食生活が原因と考えられていることが整形外科的な腰痛の捉え方と大きく異なる点ではないでしょうか。腰の痛みを感じたら、医療機関で検査を受けることはもちろん重要ですが、ご自身の生活習慣などを振り返り東洋医学的から考える腰痛の原因に当てはまることがあれば、ぜひツボによる症状改善も試してみてください。