小気味よさはまるで“小型コンチネンタルGT”
肝心の性能は、どうだったか。まずは気になるパワーアップの行方、だけれど、正直に言うと、ベースとなったV8モデルと比べて、その差を大いに実感するほどにはパワーアップしているように思えなかった。わずかに、中高回転域でのパンチ力が増した、という程度。もっとも、だからといってそもそもの性能が高く、不満は全くない。もりもりと右足裏を押し上げるようなトルクフィールを感じながらの加速は、愉快である。
試乗車は、クーペ、コンバーチブルいずれのボディタイプにも、21タイヤ&ホイールを履くマリナーパッケージだった。
先に言っておくと、コンバーチブルボディに21インチタイヤの組み合わせでは、街乗りや高速クルージングにおいて、アシ回りの重たさや大きさをことさらに実感させるようなバタつきがあって、新型コンチネンタルGTのもつ上質な乗り心地を若干スポイルしているように思えた。もっとも、ワインディングロードを攻め込むような場面では、確かに、数々のチューニングが利き始める。ノーズの動きもシャープかつコンパクトであり、オープンエアと相まって、十分、スポーティなドライビングが楽しると言っていい。
オススメは断然、クーペの方だ。こちらは21インチをほぼ完璧に履きこなしていた。元来、12気筒モデルに比べてノーズが軽やかかつシャープに動くことがV8シリーズのウリである。S化のチューニングは、その妙味を存分に引き出してくれる、最高の贈り物となった。
とにかくガンガン攻めてもゆったり転がしても、車体全体がグッと引き締まったように感じられ、そのぶん、自在に運転できるという自信にも似た感覚がドライバーに生まれてくる。それはまるで、小型のコンチネンタルGTを作ってくれたか、と、思えてしまうようなライドフィールであり、実際、その小気味のいい動きはたまらない。ノーマルモデルに顕著だったしなやかシャシーも、ほどよく残されていて、これなら街乗りから峠道まで、存分に楽しめそう。
今、コンチネンタルGT系で、最もオススメのモデルである。というか、いよいよW12は要らなくなってきた。