今や主役のV8を得意と手法で高性能化
英国の老舗高級ブランド、ベントレーが再び売れている! 2013年、ベントレーは史上最高の販売台数を達成した。07年以来、6年ぶりとなる2度目の年産1万台超え、である。世界市場を俯瞰して見れば、新型フライングスパーが登場した9月以降の伸びが利いている。けれども、2ドアのコンチネンタルGTシリーズが主役の座を譲る気配もまた、ない。世の中に送り出されるベントレーの約7割が、未だコンチネンタルGTなのだ。
特に日本をはじめとするアジアパシフィック市場(中国以外)で人気である。そして、それはV8モデルの存在によるところが大きい。
そう、コンチネンタルGTの主役は今やV8である。2013年秋のフランクフルトショーにおいて、高性能版のV8 Sが登場したこと自体、ベントレーもそう考えているという証拠だ。
そしてそれ、ノーマルV8とV8 Sとの関係は、エンジンパワーアップとアシ回りの強化、そして空力性能の向上、という点で、W12シリーズにおけるGTとGTスピードの関係によく似ている。
4リッターV8ツインターボエンジンのパワー&トルクは、それぞれ約20ps&20Nmアップの528ps&680Nmとなった。特に最大トルクは何と1700回転という、ちょい踏みの低い領域から発揮される。V8ターボがプレミアムスポーツカーの趨勢となりつつある今、ベントレーというブランドのキャラクターに十分見合った第一級の性能を与えた、と言っていい。もちろん、組み合わされたミッションは、他モデルと同様に8速ATである。
パワー&トルクアップに併せて、当然、アシ回りも強化した。10mm車高を低めるスポーツサスペンションでは、前45%、後33%もバネを硬めており、減衰力も、クーペとコンバーチブルでわずかに異なるものの、十分な見直しを受けている。その他、フロントブッシュの剛性アップやリアアンチロールバーの強化、静的トー&キャンバーの最適化に、CDC(可変ダンパー)やESCといった各種電子制御のセッティングもスポーツチューンに変更した。
これらは正しく、“スピード化”と同じ手法。ベントレーにとっては手慣れた高性能方程式の解、というわけだ。
そして、品よく控えめながらも個性を主張するエアロデバイスの数々にも注目して欲しい。光沢ブラックに塗られたフロントスプリッターにサイドスカート、リアディフューザーの“3点セット”は、低まった車高をいっそう低く見せることに成功している。