おカネをいかに効率的に使うかが大切!
維持管理コストの適正化
管理組合と管理会社の両者は、もともと利益が相反する関係にあります。つまり、管理組合が支払う委託費などは「コスト」ですが、管理会社にとってそれは「売上・利益」になるからです。そうなると、管理会社が管理組合の利益のために、管理委託費や工事費用を適正水準になるよう配慮することは期待できないと言えるでしょう。
しかも、管理会社との委託契約内容は、たいていの場合、入居する前に分譲業者系列の会社で事実上決定しており、その価格の妥当性を検証する機会もない、という実情があります。その結果、管理仕様や委託費が「お手盛り」になり、割高になる傾向があります。
この割高分が、たとえ一人あたりの負担が月額2千円程度であっても、マンション全体分(たとえば100戸)として50年間で合計してみたら、1億2千万円の機会損失につながります。これを言い換えると、大規模修繕工事1回分以上のボリュームにもなります。
したがって、マンション管理の専門家として、管理組合の負担するコストを適正な水準に修正することも、重要なミッションだと言えるでしょう。
修繕積立金の上昇リスクの緩和
分譲マンションを購入すると、毎月管理費と修繕積立金が徴収されます。前者は、日常の共用部分の管理を行うためのおカネです。後者は、およそ12年周期で実施される大規模修繕工事や、エレベータ・給排水管等の設備更新などに備えて貯めておくものです。しかしながら、新築時の修繕積立金は、将来必要とされる修繕費用に対して著しく低い水準で設定されているケースがほとんどで、入居後に段階的に増額されていく計画になっているのです。
多くの場合、購入時に住宅ローンを組み、その返済分を含めて日常の生活費をやり繰りしているので、この修繕積立金の上昇リスクをなるべく緩和したいところです。
この問題の解決策としては、上で述べた割高な管理コストを適正化し、その結果得られる余剰資金を積立金の不足分に充てることがもっとも合理的だと考えます。要は、管理コストを見直して、「組合のおカネを消費から貯蓄に移動させる」ということです。
また、マンションの長期修繕計画に記載されている、各部位の修繕周期やその工事金額を不断に見直し、ライフサイクルコストをなるべく低減させる方向で運用していく努力も必要です。
以上、私の考える「3つのミッション」をご紹介しましたが、いかがでしょう?
マンション管理士試験の受験勉強では、このような事柄を真正面から取り扱うことはないでしょうが、将来真のプロフェッショナルを目指すなら、ぜひ頭の片隅に留めていただきたいと思います。