炭水化物と糖質と糖類の違い
炭水化物は、化学的、生理的、物理的な特徴により、分類の仕方が異なります。栄養面では、タンパク質や脂質、ミネラル、ビタミンに分類されないものを「炭水化物」とします。炭水化物の中でも、- 易消化性炭水化物(人が消化収しやすく約4kal/gのエネルギー源を産生)→糖質
- 難消化性炭水化物(人が消化吸収しにくい、エネルギーは0~2cal/gと不安定。その一部が食物繊維)
糖質を含む食べ物のといえば「ごはん」があげられますが、「ごはん」はよく噛まなければ砂糖のような強い甘さは感じません。よく噛んで唾液中の消化酵素でごはんのでんぷんが麦芽糖へと分解されると甘く感じます。食品に糖質が含まれるといってもその種類によって甘みの強度や特徴も様々です。
糖類、オリゴ糖、多糖類とは
科学的に分類すると、糖質には、単糖類、二糖類、多糖類、糖アルコール、その他のものがあります。中でも糖質と糖類は、言葉の使い分けがわかりにくいのではないかと思います。単糖類には、ブドウ糖、果糖などがあります。二糖類は、単糖が二つつながったものでショ糖=砂糖(ブドウ糖+果糖)、麦芽糖(ブドウ糖+ブドウ糖)、乳糖(ブドウ糖+ガラクトース)などがあります。糖質のうちの単糖類と二糖類を総称して糖類と呼びます。オリゴ糖類は、少糖類で、単糖類が2~20個程度つながったものです。ですから二糖類(砂糖や麦芽糖)もオリゴ糖ですが、オリゴ糖の多くは、低カロリー、ビフィズス菌の栄養源になる、虫歯の原因になりにくいという性質があり、トクホ商品となっているものもあり、二糖類とは異なる特性のある糖という意味も含めて使われていることが多いです。オリゴ糖の中にも、消化吸収されるものとされないものがあり、腸内環境を改善するという作用が期待されるのは、消化吸収されないオリゴ糖です。
多糖類は、単糖類が数十から数千個つながったもので、でんぷんと非でんぷん性多糖類に別れています。食物繊維の定義は、実は国内外の組織によって多少異なっているいます。オリゴ糖、食物繊維については、過去の記事「オリゴ糖って何だろう? その種類と特徴」でもご紹介しましたので、参考にしてください。
甘味料の意味と種類……糖質系甘味料と非糖質系甘味料
甘味料にも様々な違いが
糖質には栄養的な役割だけでなく、料理などを甘くする調味料、つまり甘味料としての役割もあります。最も代表的な甘味料は、砂糖です。砂糖以外の甘味料は、代用甘味料ともよばれる甘味物質ですが、今では砂糖の代用というよりは、低カロリー、血糖値に影響しにくい、虫歯になりにくい、腸内環境を改善するなどの作用など機能性が重視され、特定保健用食品のものも数多く登場しています。
糖質の中にも甘味ではなく苦味があるものもありますが、甘味料として使われる物質で分けてみると、近年は糖質だけでなく、非糖質系アミノ酸や食物繊維などもあり、多種多様になっています。
甘味料の分類の仕方も様々なのですが、ここでは独立行政法人農畜産業振興機構での分類を参考に、大まかに種類とその特徴についてご紹介します。代用甘味料は大きく分けると、糖質系甘味料(でんぷん由来の糖、その他の糖、糖アルコール)と、非糖質系甘味料(天然甘味料と合成甘味料)に分けられます。
■糖質系甘味料
・でんぷん由来の糖
ブドウ糖、果糖、麦芽糖、水飴、異性化糖、イソマルトオリゴ糖など
ブドウ糖、果糖、異性化糖の特徴については、「果糖は太る? ブドウ糖と果糖の違いと注意点」の記事でも解説していますのでご覧ください。
<イソマルオリゴ糖>
ブドウ糖が結合したオリゴ糖で、清酒やみりんなどにもわずかながら含まれます。甘味度は砂糖の40~50%。エネルギーは4kcal/g。腸内でビフィズス菌を増やし腸内環境を改善する働きがあります。
・その他の糖
<フラクトオリゴ糖>
果糖が2個以上つながったオリゴ糖で、タマネギなどにも含まれます。甘味度は、砂糖の約25~35%。エネルギーは、1.6~2.2kcal/g。低カロリーで、インスリン分泌に影響せず、腸内環境改善などの作用があります。
<ガラクトオリゴ糖>
乳糖にガラクトースがつながったオリゴ糖で、母乳にも含まれます。甘味度は、砂糖の約25~35%。エネルギーは2~3kcal/g。低カロリーで、虫歯になりにくく、腸内のビフィズス菌を増やすなどの作用があります。
その他、乳糖、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラフィノース、トレハロースなど。
オリゴ糖については、過去の記事「オリゴ糖って何だろう? その種類と特徴」もご参考にお読みください。
・糖アルコール
自然界の植物や海草、食品などにも含まれますが、食品ではでんぷんから酵素反応などによって工業的に生産されるのが一般的です。
<キシリトール>
イチゴやカリフラワーなどにも含まれますが、樹木等から抽出したキシリランから生産されます。砂糖と同じ程度の甘味度。エネルギーは3kcal/g。血糖値をあげず、また虫歯の原因にならず、虫歯菌の増殖も防ぎます。
<エリスリトール>
白ブドウやキノコ、ワインや清酒、みりんなどの発酵食品にも含まれます。甘味度は砂糖の75%、0.24kcal/100gでノンカロリーと表示できます。虫歯にもなりにくく、血糖値にも影響しません。
他にも、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元水飴などがあります。小腸から吸収されにくいため、エネルギーが低めになります。多量に摂取すると、お腹が緩くなる作用があるものもあります。(エリスリトールは、糖アルコールの中ではおなかがゆるくなる作用が最も弱い)。
■非糖質系甘味料
・天然甘味料
植物の葉や果実などに含まれている甘味成分を抽出し生産されます。ステビアや甘草、羅漢果など。どれも砂糖の数百倍の甘味度です。
・合成甘味料
化学合成により生産され、ほとんどが甘味度が砂糖の数百倍あり、しかも低カロリー。虫歯になりにくい甘味料です。
<アスパルテーム>
2種類のアミノ酸から生成される甘味料。苦味が少なく砂糖に似た甘味、甘味度は砂糖の200倍。エネルギーは4kcal/g で砂糖と同じ。
<アセスルファムカリウム>
甘味を感じる速さが早く、特有の苦みを感じることがある。甘味度は砂糖の約200倍。濃度が低いほど甘味度が高くなることが特徴。エネルギーは0kcal/g。
<スクラロース>
砂糖に似た甘味で、甘味度は砂糖の約600倍。エネルギーは0kcal/g 。
他にサッカリン、サッカリンナトリウム、ネオテームなども。
非糖質系甘味料は、甘味度はショ糖に比べてたいへん高いのが特徴的です。合成甘味料は苦味が残る、味の切れが悪いものが見られ、数種類の甘味料を混合し、なじみのある砂糖に近い甘味になるように使われることが多いようです。
*甘味の 「強さ」
甘味料の甘味の強さを評価したものを 「甘味度 (かんみど)」と呼びます。一般的には、砂糖(ショ糖 ) と比較した値で表わされます。この評価は、検査時の条件の違いにより値に幅が出てきます。
人工甘味料とは……異性化糖は天然? 糖アルコールは人工?
人工甘味料の意味
甘味料の分類の仕方は多様です。例えば天然か?人工か?異性化糖は、一般家庭ではなじみがないので人工甘味料と思っている人も中にはいるようです。異性化糖はとうもろこしなどのでんぷんを酵素により果糖とブドウ糖にしたもので、清涼飲料水や冷菓等の加工食品に使用され、工業的に作られますが、この酵素を使ってブドウ糖にする過程は、みそやみりん、酒などの発酵食品の製造でも行われます。食品であり、天然甘味料と捉えられています。
一方、糖アルコールはどうでしょうか。自然界の植物などにも存在しますが、一般に流通している製品は水素添加して工業的に生産されます。少し古い食品学のテキストでは、準天然甘味料に分類されていました。天然に存在するものだから天然甘味料と捉える人、水素添加などして生成されるので人工甘味料と捉える人、学識者や事業者などの中でも、分類の仕方は個々に異なっています。
人工甘味料の定義……法的に明確な基準なし
ガイドは消費者庁や保健所等に問い合わせをしました。結局、法的には人工甘味料は明確に定義はされていないということでした。一般に厚生労働省では、使用目的が甘味料であるものに対して、健康被害があるかどうかをチェックし、食品衛生法に基づいて、有効性や安全性が認められると指定添加物とされます。非糖質系合成甘味料のアスパルテーム、サッカリンや、糖アルコールのキシリトールなどが許可されています。また天然添加物として使用実績がある既存添加物には、羅漢果、ステビア、甘草の抽出物や大豆オリゴ糖などが許可されています。このような食品添加物には、昔は天然とか化学合成と分けていたのですが、昔から使われていたので天然添加物も明らかに害があるものや量を規制する必要があるものあり、今では天然と人工の区別はありません。
有効性という面で、代用甘味料については、エネルギーが低い、あるいは甘味度が高いので砂糖よりも使用量が減らせる、また血糖値に影響しないなどという特徴から、肥満防止などに役立つという目的で使用されています。
しかし血糖値に影響しないがゆえに満足感が得られず、たくさん摂りすぎてしまえば、結局は肥満防止の役には立たないこともあります。砂糖や代用甘味料とのつきあいは、天然・人工に関わらず、ほどほどをわきまえることにポイントがあると思います。
甘味料の大枠の分類と特徴の理解を
糖アルコールを使用していても、糖類(単糖か二糖類)ではないので、「無糖」と表示することができます。「無糖」なのに、甘みが感じられたりすることがあります。また「ゼロ」表示は、食品100g中(飲料は100ml中)の含有量が0.5g未満という規定なので、まったくゼロではない場合があります。この辺りも理解して、商品を選ぶ時の参考になさってください。数年前には脂肪の蓄積防止や血糖値の上昇抑制などの作用で「希少糖のD-プシコース」が話題を呼び、産官学連携で商品化もされました。
ますます多様化する甘味料は、今後もどんどん開発されていくでしょう。すべてを網羅して理解することは難しいことですが、大枠の分類と特徴は理解しておくと、栄養表示等も少しは理解しやすくなるのではないでしょうか。
■参考
・「日本人の食事摂取基準」(2015年版)炭水化物(厚生労働省)
・人工甘味料と糖代謝 (日本栄養・食糧学会誌 第 66 巻 第 2 号 6975(2013) )
・砂糖以外の甘味料について(農畜産業振興機構)
・近年における甘味料・でんぷんの需要動向(農畜産業振興機構2016年4月)
・"甘味"に関する教育内容の再構成と指導(愛知教育大学)
・食品添加物Q&A(日本食品添加物協会)
【関連記事】