グローバル・ソブリン・オープンとは?
最も有名な投資信託である「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」、略して「グロソブ」とはどんな投資信託なのか、改めて簡単に触れることにしましょう。国際投信投資顧問が運用する「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」は、1997年12月に新規設定された投資信託です。
わが国で主流となった毎月分配型投資信託の中では初期の投資信託で、運用履歴は15年を超えるご長寿ファンドに数えられる投資信託の1つです。
世界主要先進国のうち、信用力の高い国の各国政府や政府機関が発行する債券(ソブリン債)に投資され、ソブリン債からの安定した利子収入を得るとともに、売却益の確保を目指しています。為替ヘッジは行われていません。
通貨選択やカバード・コール戦略などといった複雑な仕組みではなく、非常にシンプルな運用スタイルと、安定した分配金が支払われていたことから純資産総額は右肩上がりで増加。ピーク時の2008年8月には、純資産総額が約5兆7700億円と超大型ファンドに成長したのです。
その後、同年9月にリーマン・ショックがあり、翌2009年1月に分配金を1万口あたり40円から30円に減額、同年8月に35円に5円増額したものの資金流出は継続。同年から通貨選択型などの高分配型の毎月分配型投資信託が相次いで設定されたことから、分配金の少なさなどを嫌気した資金流出は継続しているようです。2014年1月24日現在の純資産総額は、約1兆3000億円にまで減少しています。
毎月の分配金は15円減額される
資金流出が継続しているグロソブですが、年明け1月17日の第193期の決算に1万口当たりの分配金を35円から20円に減額しました。分配金の減額は2008年12月の第132期の決算期以来5年1ヵ月振りのことです。分配金が減額された背景は、投資対象である先進諸国が長期にわたる低金利政策を続けている結果、ソブリン債からの利子収入が減少していることがあげられます。2013年12月末基準のマンスリーレポートによれば、ポートフォリオの平均直接利回りは3.41%。平均最終利回りは2.02%と直接利回りを下回っていることから、投資対象であるソブリン債を満期償還時まで保有を続けると償還差損を被る可能性が高くなっています。
各国の金利は、景気回復を背景として緩やかな上昇が予測されていることから、ソブリン債の売却益を期待しにくくなっている状況にあると考えられます。これまで金利の低下を背景として、ソブリン債を含む債券投資には追い風が吹いていましたが、今後は向かい風となりそうです。唯一の光明は為替相場が円安基調にあることですが、2013年のような大幅な為替効果が期待できるかどうかは難しい気がしてなりません。
2014年1月17日に作成された販売用資料によれば、2013年2月(第182期)から2014年1月(第193期)における、期中収益の平均は1万口当たり14.58円。毎月の分配金は1万口あたり35円なので、期中の収益で賄われている割合は41.66%に過ぎず、半分以上は期中収益に該当しない部分(翌期繰越分配対象額)から賄われているのです。
決算後の翌期繰越分配対象額は、1万口当たり525円(第182回)が317円(第193期)と200円以上も減額していることから、仮に期中の収益が0円だったとしたら9カ月で底をつく状態というのが現状なのです。
1万口当たりの分配金を20円に減額しましたが、それでも期中の収益で全額賄うことができません。過去1年の期中の収益の最高額は18円であり、また過去1年間の平均額は14.58円ということを考慮すれば、翌期繰越分配対象額からの取り崩しが止まらない状況に変わりありません。
1日でも早く翌期繰越分配対象額を積み増せる状態にならない限り、厳しい状況の綱渡りは続くと考えたほうが無難な気がしてなりません。2014年1月24日現在の純資産総額2位のフィデリティ・USハイ・イールド・ファンドとの差は約2000億円。同ファンドが2013年の資金流入額が第1位だったことを考えれば、いよいよグロソブが純資産総額第1位の座を明け渡すカウントダウンが始まったのかもしれません。