いつもの町が別世界に見えてくる『ゆきがやんだら』
白い雪は音までも包み込み、この世界を変えていく
いえ、ひょっとするとそう感じるのは、大人だけかもしれません。絵本を読んでもらっている小さな読者たちは、外へ出ることを止められたぼくに同情したり、雪が止んでママとお外で遊ぶくだりに歓声を上げたりするのですから。
それでも、小さな読者にだって、ぼくが住み慣れたこの町がいつもとは違う別世界に見えているのではないかと思います。不要なものをそぎ落とした酒井さんの絵が、いつもの街を異世界に変身させているのではないかと…… それが、どんなに美しい世界でも、異世界には小さな不安が付きまといます。だからこそ、このお話は大好きなママのお膝で読んでいただきたいと思います。
いつもとは違う特別な雪の日に、母子の間に流れる温かで緩やかな時間を、読者も一緒にお楽しみください。物語を楽しめるようになった5歳前後のお子さんに特におすすめです。
詳しくはこちらでどうぞ →寒い夜にママのお膝で読みたい 『ゆきがやんだら』
冬の始まりから春の訪れまでを美しく描く
『しろいゆき あかるいゆき』
おまわりさんの奥さんが「つま先が痛む」と言っています。奥さんは雪が降る前にはいつも、つま先が痛むのです。奥さんの予言(?)通りに、空は粉雪でいっぱいになりました。初雪です。冬は、誰にも気づかれずに舞い降りたひとひらの雪から始まり、深まっていきます。『しろいゆき あかいゆき』は、冬の始まりから、1羽のこまどりがこの地に春の訪れを告げるまでの、季節の変化を美しく描いた作品です。お話には、大冒険もなければ、魔法使いが登場することもありません。静かな田舎町の人々の冬の生活が丁寧に語られていきます。そのため、大人向きの作品と思われがちですが、読み聞かせの経験から言わせていただくと、豊かなストーリーを楽しむことができるようになる年齢の子どもたちは、この作品の世界にどっぷりとつかり、美しい季節の移り変わりを充分楽しむことができるようです。
雪は「しずかなよるに ふうわり おっとり」舞い降りてくるといった江国香織さんの美しい訳を、何度も嬉しそうに繰り返すお子さんたちの姿を目の当たりにすると、絵や言葉の美しさを感じとって、すぐに吸収してしまう子どもたちの力に心底驚かされます。
詳しくはこちらでどうぞ →季節の移ろいを美しく描く 『しろいゆきあかるいゆき』
>> 最後は、小学校低学年くらいのお子さんにおすすめの雪の絵本をご紹介します