資産運用では適宜リバランスを行おう
株式、中でも日本株を投資対象とする投資信託の騰落率が突出していることから、債券やバランス型などの投資信託の騰落率は気にしない。あるいは、気にされたとしても投資妙味が薄いと思われるかもしれませんが、いつの時代でも資産運用は「長期国際分散投資」が原則ということを忘れてはなりません。株式を投資対象とする投資信託の運用成績が好調だと、個々人の資産運用の成績も良好な人が多くなる一方、資産全体のバランスでは株式が資産全体に占める割合が高くなりがちです。上手く言ってるのだから、株式の資産配分割合が高いまま継続と思われるかもしれませんが、リスクの取りすぎになっていることもありえます。
「勝って兜の緒を締めよ」と言われるように、適宜リバランスなどを行いリスクの取りすぎにならないようにしましょう。リバランスとは、投資配分を運用当初の状態に戻すことです。増えすぎた資産を売却して、目減りしている資産を買い増すなどを行うのが基本になります。
外国債券はハイイールド債券が一人勝ち
ポートフォリオにおける安定の役目を果たす、債券、中でも国内債券で運用される投資信託の騰落率から見ていくことにしましょう。対象となる投資信託は、各資産クラス共通で、純資産総額10億円以上、確定拠出年金(DC)専用またはラップ口座(SMA口座)専用ファンドは除き、2013年12月31日現在です。国内債券で騰落率第1位は、みずほ投信投資顧問が運用する「MHAM物価連動国債ファンド」で、騰落率は3.13%でした。異次元緩和と称される大胆な金融緩和の影響などにより、消費者物価指数が年央から急上昇したこと。2013年度から物価連動国債の新規発行が再開されたことなどが要因でしょう。日本銀行は、経済状況などによって追加緩和を示唆していることから、国内債券では2014年も第1位になるかもしれません。
広義で言えば、転換社債型新株予約権付社債、いわゆる転換社債(CB)を対象とする投資信託も対象になるのでしょうが、転換社債は株式としての側面が強いと考えられるため、あえてランキングから除外しました。国内債券型は、アクティブ運用タイプが意外と健闘したようです。
外国債券を投資対象とする投資信託も、転換社債を投資対象とするタイプは除きます。第1位は騰落率37.57%、野村アセットマネジメントが運用する「野村ユーロ・ハイ・イールドボンドオープンBコース」です。ユーロ建てのハイイールド債券を投資対象とし、為替ヘッジは行われていません。2013年は、世界的に景気が回復傾向であったことから、ハイイールド債券の信用リスクが低下して同債券が買われたこと。為替が円安傾向にあったことが要因と考えられます。
外国債券の騰落率上位は、すべてハイイールド債券に投資するタイプ。世界的な金融緩和により投資家のリスク許容度が上がったこと、景気回復でハイイールド債券の債務不履行(デフォルト)リスクが後退したことも見逃せないと思われます。
健闘したバランス型ファンド
株式や債券、REIT(不動産投資信託)などの複数の資産クラスに分散して運用が行われるバランス型ファンドは分散が効いている分、騰落率はあまり高くはないと思われるかもしれませんが、日本株が急騰した分、運用成績はかなり良好と言えるでしょう。第1位は、騰落率50.34%の大和証券投資信託委託が運用する「ダイワ三資産分散ファンド(隔月分配型)です。外国債券50%(ドル通貨圏とユーロ通貨圏に同比率投資)、国内株式40%、国内REIT5%、外国REIT5%の割合で投資されます。国内株式が40%もあること、国内外のREITの上昇に加え、為替差益がプラスされたことが好成績の要因でしょう。
最後にコモディティ(商品)を投資対象とする投資信託です。2013年は金価格が低迷したものの、運用成績はそれほど悪いものではないようです。第1位は、東京海上アセットマネジメント投信が運用する「エネルギー・食料関連ファンド」で、騰落率は27.93%でした。
コモディティ(商品)の中でも、生活に密着して継続的な需要が見込めるエネルギー、食糧関連に投資先を絞った運用を行います。為替ヘッジは行われていません。
2回にわたり、2013年の投資信託の騰落率を見てきました。資産運用をする上では、過去の運用成績は将来を保証するものではないということも忘れないでいただきたいと思います。