ヘルスケアREITの賃料収入は安定傾向
これまで東京証券取引所に上場されているJ-REITの投資対象は、オフィスビルを中心にして、商業施設、レジデンス(住宅)、ホテル、倉庫などの物流施設というものでしたが、これにヘルスケア関連施設が加わります。これが2014年度中にも上場されると言われている「ヘルスケアREIT」です。具体的には、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を組み入れて運用することになります。すでに、大和証券や新生銀行、三井住友銀行などが、スポンサー企業としてヘルスケアREITの設立に動き始めています。
すでに日本は「高齢化社会」ではなく、「超高齢社会」に突入しています。特別養護老人ホームや優良老人ホームなど、高齢者向けの施設に対するニーズは、これから更に高まっていくでしょう。
そこにファンドの資金が入ることの意味は、確かに大きいと思います。現状、高齢者用の施設が足りず、なかなか施設に入れないお年寄りが大勢いらっしゃいます。ファンドを通じて集めた資金が、高齢者用施設の建設に活かされるようになれば、政府が打ち出している成長戦略のひとつである介護・医療施設の充実につながる可能性があります。
ただ、投資対象として見た場合、ヘルスケアREITは魅力的なのかという点は、投資家ならば誰もが気になるところでしょう。
基本的にREITは、利回りベースで投資する商品です。現在、J-REIT全銘柄の平均利回りは3.7%前後ですが、この分配金利回りが上昇すれば、J-REITの投資妙味は向上します。
分配金利回りが上昇する要因は2つで、ひとつはJ-REITの価格が下落すること。もうひとつはファンドに組み入れられている物件から得られる賃料が上昇し、キャッシュフローが改善されることです。
賃料収入が安定しているかどうかは、物件のタイプによって異なります。一般的にオフィスビルは賃料が景気に大きく左右されますが、レジデンスや商業施設は、比較的景気の影響は受けにくいという傾向があります。ヘルスケアREITは、どちらかというとレジデンスや商業施設と同様、賃料は安定指向が強いと思われます。なぜなら、景気が良いからといって、有料老人ホームの賃料を大幅に引き上げるなどという行為は、なかなか容認されないからです。
ヘルスケアREITの登場にはまだ多少の時間がかかりそうですが、組入物件の特性から見ても、安定指向の強いREITになる可能性が高そうです。