療養食・食事療法/腎臓病・痛風の療養食・食事療法・透析食

腎臓病の食事……良質なたんぱく質とは?

腎臓病のレシピや本などを見ていると「良質なたんぱく質」を食べようという言葉をよく目にします。良質なたんぱく質とは何でしょうか? 良質なたんぱく質は、腎臓病の人とそうでない人では同じなのでしょうか?

一政 晶子

執筆者:一政 晶子

管理栄養士・米国登録栄養士(RD) / 栄養管理・療養食ガイド

腎臓病のレシピや本などを見ていると「良質なたんぱく質」という言葉をよく目にします。そして一般的には、良質なたんぱく質は「肉・魚・卵・乳製品・豆など」と書いてあります。しかし、それでは「単にたんぱく質の多い食品全部じゃない……」とか、「腎臓病がある人とそうでない人にとって良質なたんぱく質って同じなの?」などの疑問がでてきます。今回は、腎臓病で透析をしていない人のための良質たんぱく質をエビデンスなどを元にして紹介します。

「良質なたんぱく質=肉・魚・卵・乳製品・豆」とは言えない?

植物

動物性たんぱく質を使わないメニューも取り入れるのもよいかも!

最近では、植物性たんぱく質の方が動物性たんぱく質よりも腎臓病に優しく、腎臓病の進行を遅らせるという考え方や研究結果などが増えてきています。実際に、菜食主体の食事を試みる人もいるようです。

動物性たんぱく質は吸収率がよすぎて、必要以上のたんぱく質が吸収されやすいという可能性もあります。動物性たんぱく質は、植物性たんぱく質と比較して体内で利用しやすく、牛乳・肉・卵などから摂取するたんぱく質の90~99%が使われます。植物性たんぱく質の方が体内へのたんぱく質吸収が70~90%と少なめです。これは植物細胞壁や繊維質などによるもので、酵素などへの抵抗があるためです。たんぱく質の吸収の違いだけでなく、動物性食品に多めに含まれているリンなども腎臓病に進行に影響を与えているかもしれません。

また食べ物と炎症も関係しているかもしれません。腎臓病の多くのケースは慢性病です。慢性病は炎症と強い関わりがあると考えられています。よって、炎症を起こす食べ物や炎症を抑える効果がない食べ物、例えば脂身の多い肉や脂肪分の多い乳製品は、腎臓病にとってベストではないかもしれません。植物性の方が、炎症効果を期待できるかもしれません。

良質たんぱく質=必須アミノ酸?

良質たんぱく質といえば、よく必須アミノ酸が引き合いに出されます。しかし非必須アミノ酸は体に不可欠だからこそ体内で生成され、必須アミノ酸は摂りすぎる必要がないとも考えられます。完全な菜食主義者の人であれば、アミノ酸のバランスにも注意を払う必要がありますが、量が少なくても、魚や卵、肉や乳製品を食べている人では、必須アミノ酸やアミノ酸スコアを心配する必要は特にありません。

腎臓病食に必要なたんぱく質の量

腎臓病(透析無し)の場合、最適なたんぱく質の量はまだよく分かっていませんが、一般的には体重1kg当たり、たんぱく質が0.6g~1gくらいだと言われています。65kgの人の場合、39~65gということになります。たんぱく質の量は、運動量・たんぱく質の吸収率・体力・年齢・他の疾患の有無・食事や病気に対する価値観などによって異なってきます。自分が納得できる食事療法を栄養士や医師と話して試みることが大切です。たんぱく質は、筋肉・体力の維持や免疫力の維持などに大変重要なので、少なければよいというわけではありません。食事療法が大変なだけでなく、元気がなくて疲れやすく、病気や風邪を引きやすければ意味がありません。

腎臓病の食事の「良質なたんぱく質」は「たんぱく質プラスα」

腎臓病がある人にとって良質なたんぱく質を含む食材とは、たんぱく質以外のプラスαがある食材です。例えば、腎臓病の人が不足しやすい、カルシウム、ビタミンD、鉄分、または抗炎症・抗酸化作用のある物質を含むたんぱく質です。なぜ抗炎症・抗酸化作用というと、腎臓病は炎症などとの関連が示唆されているからです。腎臓病の人はリンを控えている人が多いと思いますが、たんぱく質が多いものにはリンも多いのが一般的。肉、魚、乳製品、豆・豆製品はリン酸が多めなので、どうせたんぱく質をとるのならばプラスαの効果を選んでみましょう。

■カルシウムの多いたんぱく質
ヨーグルト、牛乳、チーズ、豆腐など
  • ヨーグルト(100g):たんぱく質4g、カルシウム120mg、リン100mg - 市販の個別ヨーグルトくらい
  • 牛乳(100g):たんぱく質3.3g、カルシウム110mg、リン93mg - コップ半分くらい
  • チーズ(20g):たんぱく質4.5g、カルシウム120mg、リン140mg - プロセスチーズ1枚くらい
  • 木綿豆腐(100g):たんぱく質6.6g、カルシウム120mg、リン110mg、鉄0.9mg
■ビタミンDが多く、抗炎症作用があると考えられているたんぱく質
サケ、マス、さんま、さば、いわしなど
  • いわし(100g):たんぱく質20g、ビタミンD10μg、リン250mg、鉄2mg
  • さけ(100g):たんぱく質21g、ビタミンD10~30μg(さけの種類によって異なる)、リン250mg
  • さんま(100g):たんぱく質18g、ビタミンD19μg、カリウム200mg、リン180mg、鉄1.4mg
  • さば(100g):たんぱく質18g、ビタミンD10~19μg、リン220mg
  • いわし(100g):たんぱく質19g、ビタミンD10μg、リン250mg
■鉄分が多いたんぱく質
ヒレ肉、卵黄、アーモンド、レバー、くるみ
  • 牛ヒレ肉(100g):たんぱく質20g、リン180mg、鉄2.7mg
  • 豚ヒレ肉(100g):たんぱく質22g、リン220mg、鉄1.2mg
  • 牛レバー(100g):たんぱく質19g、リン330mg、鉄4mg
  • 豚レバー(100g):たんぱく質20g、リン340mg、鉄13mg
  • 鶏レバー(100g):たんぱく質19g、リン300mg、鉄9mg
  • 全卵(100g):たんぱく質16.5g、リン180mg、鉄1.8mg - 小さい卵2個分くらい
  • くるみ(100g):たんぱく質14.6g、リン280mg、カリウム540mg、鉄2.6mg - 軽く一つかみは10gくらいです
  • アーモンド(100g):たんぱく質18.6g、リン500mg、カリウム770mg、鉄4.7mg - 軽く一つかみは10gくらいです
※補足:レバーが好きな人は少量を楽しんでもよさそうですが、たくさん食べるとリンが多くなりすぎそうです。アーモンドやくるみもオメガ3脂肪酸などを含み、抗炎症作用があると考えられています。少量はよさそうですが、ナッツ類はリンやカリウムが多いので気をつけて下さい。

■リン酸の少ないたんぱく質
卵白
  • 卵白(100g):たんぱく質10.5g、リン11mg
※補足:厳しくリンを管理したいという人は、工夫して卵白を使うとよさそうです。


いかがでしたでしょうか。信頼できる栄養士や医師と一緒に、自分に合った食事・栄養プランを考えてみてください。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます