冷凍食品から検出された農薬・マラチオンの危険性・中毒症状
2014年年初に冷凍食品から検出され騒がれた農薬・マラチオンは、有機リン系殺虫剤・イオウ系殺虫剤です。黄色から茶色の液体で、虫などが接触することで、効果を発揮します。主に、アブラムシ、ダニ、カメムシ、ハエ、カなどの殺虫剤です。残留基準は、小麦・玉葱・カボチャなどの農作物で8.0ppm以下、それ以外の作物では0.1~8.0ppm以下になっていますから、0.1ppm以下にしたいものです。
ppmは100万分の1ですので、1ppm=0.0001%です。
誤って摂取してしまった場合、有機リン剤の症状が出ます。嘔気、発汗、瞳が小さくなり見にくくなる縮瞳、視力低下、頭痛、倦怠感です。
イオウ系のものあるため、鉄などの金属、プラスチック、ゴムなどは傷みます。マラチオンの1日の許容量は、体重1kgあたり0.02mgなので、体重50kgの成人の場合は大体1mgが上限と考えてよいでしょう。
有機リンは、何もマラチオンに限ったものではありません。ほとんどの農薬に含まれます。有機リンについてです。
有機リンの特徴・有機リン中毒の症状
有機リンは、神経同士の連絡に使われるアセチルコリンを減らしてくれるコリンエステラーゼという酵素を抑えます。そのため有機リンを摂取してしまうと、アセチルコリンが多くなり、自律神経、特に副交感神経と呼ばれる神経が刺激された状態になります。これにより、瞳が小さくなる縮瞳、腸管の動きがさかんになるためにおきる嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、また、よだれや気道の分泌液が増えることで肺に水が溜まる肺水腫になってしまいます。さらに、痙攣や呼吸筋が麻痺したり、頭痛、めまい、興奮、意識が無くなる意識障害、体温上昇が見られます。
通常の使用では、これらの働きを虫に対して使うことで殺虫剤、農薬として活用でき、よほど大量でなければ人に対して症状が起きることはないのですが、誤飲などの大量摂取によって、同様の症状が人でも起こってしまいます。
診断は、服毒した農薬の同定が重要です。血液検査を行い、コリンエステラーゼを測定します。
治療法は、胃の中を洗浄する胃洗浄、活性炭や下剤などを投与します。ひどい場合は、腸洗浄まで行います。薬としては、副交感神経を抑える硫酸アトロピン、有機リンと結合して有機リンの作用を抑えるヨウ化プラリドキシム(PAM)が使用されます。呼吸筋の麻痺には呼吸管理をします。有機リンは脂肪へ沈着しますので、血液中の濃度は低いと言われています。基本的には有機リン剤の多くは、低毒性です。
パラコートの特徴・パラコート中毒の症状
パラコートは除草剤で、褐色の液体です。販売時に記名する必要があり、身分証明書の提示が必要です。体内に活性酸素を発生させ、細胞を破壊します。服毒すると、口から胃まで粘膜が障害され、大量に服用すれば、治療が無効です。治療は、胃洗浄、腸洗浄、血液浄化、ステロイド、ビタミンEです。グリホサートの特徴・グリホサート中毒の症状
グリホサートは除草剤で、N-ホスホノメチルグリシンという化学物質と石けんと同じである界面活性剤の混合です。毒性は弱いですが、100ml以上で死亡例が見られます。症状は、嘔気、胃痛、下痢、腹痛とショックのような状態になります。治療は、症状に応じた治療、活性炭の内服、血液をきれいにする血液吸着です。グルホシネートの特徴・グルホシネート中毒の症状
グルホシネートは除草剤で、毒性が少ないです。しかし服毒直後の症状はあまりありませんが、6~10時間後にけいれんや呼吸が止まってしまうことがあります。治療は、胃洗浄、腸洗浄、血液吸着・浄化です。尿素系除草剤の特徴・尿素系除草剤中毒の症状
植物の光合成を阻害する除草剤です。毒性は低いのですが、血液で酸素を運搬するヘモグロブリンが変化するメトヘモグロブリン血症を起こします。そのため、嘔吐、腹痛、下痢、意識障害、めまい、錯乱、腎障害、皮膚粘膜障害などの症状があります。治療は胃洗浄、活性炭と下剤の投与、ひどい場合はメチレンブルーの注射を行います。メタアルデヒドの特徴・メタアルデヒド中毒の症状
ナメクジ駆除剤です。症状は、顔が赤くなる顔面紅潮、嘔吐、下痢、意識障害、けいれん、体温の上昇です。治療は活性炭と下剤の投与です。ピレスロイドの特徴・ピレスロイド中毒の症状
蚊取り線香の主成分で、蚊の神経を麻痺しますが、人への影響は少ないです。大量に摂取すれば、意識障害、けいれん、嘔吐、下痢が見られます。治療は胃洗浄、活性炭の投与です。
農業用に使用される特定の毒物は、法律で着色と表示をしないといけません。
野ネズミの駆除に使用されるモノフルオール酢酸は深紅色、硫酸タリウム、リン化亜鉛を含むものは黒色と決まっています。
農薬には様々な製剤がありますので、種類と摂取量に応じた対応が必要になります。