不動産売買の法律・制度/不動産売買ワンポイントアドバイス

隣地の排水管に注意が必要なとき

隣地の排水管が自分の敷地を通っている!? あまりピンとこないかもしれませんが、そのような原因で売買契約トラブルになることもあります。隣地の排水管について注意が必要となるのはどのような場合なのか、法律による規定なども合わせて考えてみましょう。

執筆者:平野 雅之

【不動産売買ワンポイントアドバイス No.026】

排水管

高いほうの隣地の排水管が低いほうの敷地を通ることがある


公共下水道が整備されている敷地の場合、キッチンやトイレなどからの生活排水は、前面道路の下水道管(合流管または汚水管)へ流すことが原則です。平坦な敷地で、かつ、整った形状の区画が並んでいるところであれば、とくに問題が生じることはないでしょう。

ところが高台や起伏の多い住宅地では、敷地が接する道路に埋設された下水道管の位置よりも地盤面が低く、下水道管への接続ができない場合もあります。ポンプなどを設置して生活排水を汲み上げることが技術的には可能だとしても、その設置費用や維持管理費用が過大になれば実質的に困難でしょう。そのような場合には、さらに低いほうの隣地へ排水管を通し、その先の下水道管へ流すことが法律によって認められています。

昭和34年に制定された下水道法は、公共下水道の供用が開始された場合における接続義務を定めるとともに、他人の土地あるいは他人の排水設備を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難なときは、他人の土地に排水設備を設置すること、または他人の排水設備を使用することができる規定になっています。

また、民法による相隣関係規定でも、高地の所有者が水を排出するために河川や下水道に至るまでの低地を通過させることのできる旨が定められています。これを「余水排泄権」または「低地通水権」といいます。いずれの場合でも、排水のために隣地(低地)を使用するときには、他人の土地や排水設備にとって最も損害の少ない場所および方法を選ぶことが求められます。

さらに、高低差のある敷地だけでなく、道路に接していない敷地の場合にも下水道法の規定が適用されることがあります。建築基準法による接道義務が課せられていない都市計画区域外の住宅地では、排水管が他人の土地を通るケースも少なからずあるでしょう。

一戸建て住宅や土地を購入するとき、隣地の排水管などが地上に露出していれば現地を見てすぐに気付きますが、これが地中に埋設されている場合にはその事実を見落としたり、その位置が判明しなかったりしてトラブルになることがあるようです。建築には大きな支障がなかったとしても、他人の生活排水が自分の敷地を通ることに抵抗を感じる場合もあるでしょうし、もしその管が破損したり詰まったりすれば、思わぬ被害を受けることになりかねません。

周囲に高低差のある敷地の場合、あるいは隣接する土地のいずれかが道路に接していない場合には、購入しようとする敷地だけでなく、周りの敷地の排水管の状況にも十分に気をつけることが必要です。仲介する不動産業者の調査が不十分だと感じたら、しっかりとした説明を得られるまで売買契約を見合わせることも考えるべきです。


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