瘤? 脂肪の塊? アテロームとは
アテロームは粉瘤(ふんりゅう)とも呼ばれ、最も多い良性皮膚腫瘍です。「脂肪のかたまりができた」と受診されることもしばしばありますが、実は脂肪のかたまりではなく、皮膚の下にできた袋状のできもので、その中には角質や皮脂などの老廃物が溜まっています。そのため、化膿したり強い臭いを放つことがあります。アテローム・粉瘤の原因・特徴
アテロームができる原因は実ははっきりしていません。毛根を形成している組織の一つである「毛漏斗」に由来してできると言われています。先述の通り、「皮膚の下の袋状のできものの中に、角質や皮脂などの老廃物が溜まってできるもの」なので、年齢や性別を問わず、誰にでもできる可能性があります。小児から成人まで、男女ともに、できる部位も頭の上から足の先までと、皮膚があればどこにでもできるのです。挙げられる傾向としては、
・ 顔、首の後、耳の後や背中などにできやすい
・ よくみると、できものの中央におへそ(黒い穴)がある
・ 外傷(けが)や手術などによりできることがある
というものがあります。
アテローム・粉瘤の実際の写真・症例画像
アテローム・粉瘤の治療法・外科的手術の流れ
アテローム治療は外科的治療になります。良性腫瘍なので手術をするかどうかは、本人の意思にゆだねられますが、残念ながら自然治癒して勝手に消えたりすることはありません。飲み薬や塗り薬でも同様です。大きくなる、もしくは感染を伴うと赤く腫れ上がり、痛みや膿を伴い、最終的には破裂します。さらに、ごく稀に悪性化する(癌化する)との報告もありますので、まずは形成外科・皮膚科の受診をお勧めします。■炎症が強いアテローム(粉瘤)の治療法は、切開排膿後の摘出術
強い炎症がある状態で摘出術などの手術を行うと、再発のリスクがあったり、腫瘍が腫れて大きくなっている分、キズも大きくなってしまいます。そのため処置は、皮膚に切開を加えて中の膿を出す「切開排膿」に留めておきます(fig.1)。
切開排膿処置;赤線が切開した部位 すべては取り除けない (fig.1)
■炎症がないアテローム(粉瘤)の治療法は、局所麻酔での摘出術
巨大な粉瘤でなければ、局所麻酔で治療(摘出術)が出来ます。一般的な治療の流れを以下に説明します。
手術が決まれば、受診当日に日帰り手術となります。(大学病院や総合病院などでは当日に手術をしないこともあります。)まずは、皮膚の切開予定部分にペンで印を付けます。その際、おへそ(黒色の開口点)も一緒に取り除かないと再発の可能性があるため、おへそを含め皮膚に紡錘形(ラグビーボール状)のデザインをします。そして、皮膚を切開する部位に麻酔の注射をします。数分待ち、痛みを感じなくなったことを確認し、皮膚を含め袋を摘出します。電気メスなどで止血をして、キズを縫合し終了です(fig.2)。
アテローム(粉瘤)の手術時間・痛み・抜糸・傷あとのケア
手術時間は大きさにもよりますが、おおよそ15分程度です。手術が終わって1~2時間は麻酔が効いていますので痛みはありません。それ以降の痛みも少ないですが、念のため痛み止めも処方しますので内服するとよいと思います。1週間後に抜糸をします。抜糸は1~2分程度で終わり、痛みはありません。傷あとをよりきれいに治すために、術後テープを貼る場合もあります。縫うことで皮膚に緊張がかかるとキズの幅が広がり易くなるので、キズに直接緊張がかからないようにするためです。また、日焼けをするとキズが目立ち易くなるのでそれを防ぐ為でもあります。
切開する皮膚は最小限にして袋を取り出しますので、傷あとは小さく目立ちにくいものになります。アテローム(粉瘤・ふんりゅう)が小さなうちに治療をすれば、傷あともそれだけ小さくてすみます。特に顔などでは傷あとが気になると思いますが、形成外科で行う手術では目立ちにくい方向に切開を加え、特別な縫合法で行いますので術後半年から1年もするとキズはほとんど目立たないものとなります。
くりぬき法などのアテロームの手術法
その他の手術法として、「くりぬき法」と呼ばれるものもあります。くりぬき法では皮膚に丸い小さな穴をあけて、内容物を掻き出します。しかしこの方法では内容物や袋そのものが皮膚の下に残ってしまう可能性があり、また時間が経過した後も、傷跡が凹み目立ち易いというデメリットもあります。病院、診療科、執刀する医師などにより再発率や傷あとの目立ちづらさなど成績が異なりますので、これらを慎重に選ぶことをおすすめします。