11月は投資信託も大幅に売り越している
毎週木曜日(祝日がある場合は金曜日)に投資部門別売買代金差額が東京証券取引所調べとして公表されます。加えて、毎月第1週目には月間の投資部門別売買代金差額も公表されています。メディアで個人投資が大幅に売り越し、あるいは外国人投資家が大幅に買い越しなどと度々報道されますが、この投資部門別売買代金差額を指しています。2013年12月5日に公表された月間の投資部門別売買代金差額によれば、個人投資家は現金(現物)1兆9706億円、信用取引665億円の合計2兆372億円もの株式を売り越しています。さらに、投資信託も1149億円の売り越しとなっています。投資信託は個人投資家以外の取引も入っていることから、全てを個人投資家の売りと断定できませんが、かなりの部分は個人投資家と考えられますので、個別株と投資信託を合わせれば、2兆1000億円超を売り越したことになると思われます。
ここまで大きく売りが膨らんだのは、日経平均株価が年初来高値を更新する程上昇したこと。並びに上場株式や公募株式投資信託などの売却益や配当金(分配金)にかかる10.147%の軽減税率が年内に終了することを見越した売りと考えられます。
ご承知の通り、2014年1月から上場株式や公募株式投資信託の売却益や配当金(分配金)にかかる税率は、本則の20.315%に戻されることになっています。年内であれば、12月25日までに売買が成立した場合の売却益は、10.147%ですが、翌26日に売買が成立したものは、受け渡しが2014年になりますので20.315%の税率が課せられることになります(特定口座で取引した株式の場合)。
ただし、投資信託によっては株式と同じく4営業日受け渡しのものもあれば、外国株式、中でも新興国株式を投資対象とする投資信託では、受け渡しに1週間近くかかってしまうケースもあります。税率10.147%の内に利益を確定させようと考えられている投資家の方々は、余裕を持って売却されるようにしてください。
ちなみに、外国人投資家は11月にどのくらい株式を買い越したのかと言えば、2兆2993億円もの買い越しで、2013年3月の2兆6826億円に次ぐ買い越し額となっています。
どんな投資信託が売られたのか
株式市場が上昇したこと、ならびに上場株式等の軽減税率が年内で終了したことが、個人投資家が11月に大きく売り越した要因と考えられますが、それではどんな投資信託が売られたのか見てみましょう。一見すると好成績のアクティブ運用のファンドが売られたように思えますが、大幅に純資産総額を減らしたのはインデックスファンドでした。日本株を投資対象とするアクティブ運用のファンドでは、JPMアセットマネジメントが運用する「JPMザ・ジャパン」が有名ですが、同ファンドからの11月の資金流出は約203億円です。
約203億円でもかなりの流出額と言えそうですが、11月には300億円を超える資金流出があったインデックスファンドもあります。年初来高値を更新した日経平均株価連動のインデックスファンドです。日興アセットマネジメントが運用する「インデックスファンド225」が約336億円、DIAMアセットマネジメントが運用する「日経225ノーロードオープン」約330億円です。その他、JPMザ・ジャパンを超える資金流出があったインデックスファンドは3本あります。
資金流出が300億円超えのファンドはもう1本あり、野村アセットマネジメントが運用する「ハイパーブル・ベア3(日本ハイパーブル3)」が約327億円となっています。
日経平均株価、言い換えれば日本株がさらなる上昇をすれば、今後も個人投資家からの売りが出てくるでしょうが、軽減税率が年内で終了することを考慮すれば、その売りもあと、2週間程度。年が明ければ、個人からの売りが減少すると予測されるので、日本株の需給は大きく改善される可能性が高くさらなる上昇が期待できそうです。
なお、TOPIX(東証株価指数)連動のインデックスファンドからは、多額の資金流失は起こっていないようです。