慶一さんとKERAさんの接点
ガイド:慶一さんは80年代にKERAさんがナゴムレコードでやっていたことをどう見ていたんですか?
鈴木:
ナゴムはわりと縁がない。ナゴムから1枚出した人、直枝(政広)君とかグランドファーザーズとかそのへんはその後もおつきあいがあって、「あ、ナゴムにいたの?」って後で気づいたりもする。で、私は水族館レーベルのようなものを作っているけど、あれはメジャー傘下にいる一レーベルであって、長持ちしなかったよね。で、ナゴムは長持ちしてるじゃない?これはすごいことだよ。これぞインディーズだと。KERAは80年代に開始したけど、私たちがムーンライダーズ・レコーズを開始するのは21世紀に入ってからなんだよ。そんなタイムラグがある。
ガイド:
KERAさんはムーンライダーズをいつ頃から聴き始めました?
KERA:
80年の『カメラ=万年筆』から入って、そこからは発売日に買ってましたね。だからポニーキャニオンに行った時、発売日前にサンプル盤がもらえるのが嬉しくてね。「ムーンライダーズのサンプル盤いつできるの?まだできないの?」って、ディレクターをせっついてた(笑)。
ガイド:
メジャー・レコード会社の中でライダーズがやっていることは、どう目に映りましたか?
KERA:
すごく刺激的でしたね。特にニューウェイヴは先陣を切るっていう、最初にやった者勝ち、みたいなところあるじゃないですか。それを聴いてから「あれみたいのやりたい」となると全然違う話なんですよね。新鮮度も落ちるし。
鈴木:
それをやるにはレコード会社と折り合いをつけつつ騙さなきゃいけない。予算を引っ張り出さなきゃいけないし、誰かが始末書を書くかもしれない。
KERA:
そうですね。それをやるには僕らはまだ子供でしたよ。
鈴木:
レコード会社に期待してもらっておいて好きなことをやるっていうのは、ひじょうに難しい。「これ売れないんじゃないの?」「いや、もう一回聴いてみて」とかうまくかわしつつも、段々しめつけが厳しくなる。東芝行くと「プロデューサーをたてたらどうか?」と言われ、(レコード会社がセレクトした)プロデューサーに会いに行くと「600曲作れ」と言われる。「それちょっと、バンドのメンバーに持ち帰ります」と言ってメンバーに相談すると、「600曲?そんなの無理無理。やめやめ!」ということになる。そしてレコード会社の人が「最大のチャンスを逃しましたね」と言ったりもする(笑)。その次にファンハウス行けば「カヴァーはどうでしょう?」と言って、大量のリストが出てくる。その中から選んだらどうかって。それを持って帰るけど、全然違う曲を選んじゃう(笑)。
KERA:
それ、ファンハウスでロンバケ(ロング・バケーション)も言われたの。慶一さんが断った曲を「歌わないか」って(笑)。
鈴木:
アイデア一個しかないんだな(笑)。
KERA:
600曲って、ひとり100曲でしょ?それをどんだけの期間で作れって言われたんですか?
鈴木:
一ヶ月以内(笑)。
KERA:
むちゃくちゃだよ(笑)。