判例対策の王道「判例百選」。しかし…。
一方、行政事件訴訟法の勉強で悩む受験生が多くいます。それは、細かい判例が出題されるからです。そこで、次に判例教材が問題になります。判例教材と言われると、真っ先に有斐閣「判例百選行政法」1、2が挙げられます。法学部の授業における副教材のナンバーワンです。国家試験によっては、「百選掲載判例が出題の上限」と言われることすらあります。行政書士試験においても、その傾向は否定できません。
このように判例百選は素晴らしいものですが、難点があります。分量が多く、解説が難しいのです。初学者かつ独学者が百選を読みこなすことは不可能です。
そのような難点もあり、判例百選をより易しく簡易にしたような本も出ています。それが、『法律入門判例まんが本(10)行政法の裁判100』です。百選掲載判例を中心に、コンパクトで読みやすく、簡潔にまとまっています(なお、漫画は4コマ漫画程度です)。
理想としては、これをを読んだうえで、特に重要な判例だけ百選を読むことだと思います。ただ、判例は後記の基本書で勉強することも可能です(百選全部の代替ができるわけではありませんが)。しっかりと基本書を読めば、百選までは不要といえるかもしれません。
基本書
行政事件訴訟法、行政法通則、国家賠償法の対策として、学者の書く基本書と言われる教科書は有益です(もちろん予備校本も)。ただ、学者の数だけ本があるので受験生は迷います。行政書士試験ということを考えると、おすすめは、桜井・橋本先生『行政法』です。全体的にバランスがよく、他の国家試験でも広く使われている本です。また、判例がよくまとまっており、試験委員の山田先生が共著の『現代行政法入門』などもおすすめです。
基本書ではありませんが、行政法が苦手な方にご紹介したいのは、藤田先生『行政法入門』です。この本は、入門書として、非常に高い評価を得ています。名著です。行政法の枠組みを理解する上で極めて有益です。
基本書の注意点
基本書を読むことに弊害を唱える人は少なくありません。多く時間をとられてしまうからです。確かに、基本書は行政書士試験用に書かれたものではありません。不要な記述が多いのです。ですから、常に試験を意識して、必要な場所を読まなければなりません。そう考えると、基本書は、再受験者が利用するのが一番だと思います。初学者は、予備校本を利用しつつ、基本書を辞書的に使うという方法がいいかもしれません。最後に
学習効率を考えれば、独学よりも予備校を利用する方が有益です。予備校講師としての意見です。しかし、基本書を通じて学者の思考に触れることは有益です。試験問題を作成しているのは学者だからです。改定版などの出版により、リンク先の本が最新版でないこともありますのでご注意ください。
なお、私は予備校に所属しており、公平の観点から、行政書士試験用の予備校本の評価は控えさせていただきました。