ショコラスウィーツの傑作品 11層構造の“アメール 80%”
中でも注目したいのが、酸味や苦みの立ち方が微妙に違う3種類のヴァローナのショコラを使った11層構造の“アメール 80%”。味覚の記憶装置を起動させ、過去に食べたあらゆるショコラスウィーツとの比較を試みますが、今現在これに勝るものは存在しません。今後も現れるかどうか……とまで思える傑作品なのです。
最も濃厚なテイストを醸すのは、艶やかなグラサージュを纏ったガナッシュ。持続性のある高貴な苦み、酸味を備え、舌の温度でゆっくりと溶けていくこのケーキの決め手となる部分ですね。一方、ビスキュイと交互に重ねられているムースは、ガナッシュと同じようなテイストでありながら、ほろっ&スーッと消えていくどちらかというと儚い触感。この両者のショコラ香が時間差で重なり合うことで生まれる酔香によって、食べ手の思考能力は完全崩壊するのです。やさしいテイストのビスキュイが包容力を補い、そこに薄~くかけられた皮膜のパリパリ感が、濃厚さの中にも軽快さをプラス。80%のショコラを活かしきる術というものを、このケーキから教わった気がします。