グランド・ホテル形式で描いた一夜の物語
『THE 有頂天ホテル』(2005年度作品)大晦日の豪華ホテルを舞台に、新年カウントダウンを無事終わらせたいホテルマンたちと、彼らの希望を打ち砕くようにトラブルを連発する宿泊者たちを描いたグランド・ホテル形式(同じ場所で様々な人物の物語が描かれる)の喜劇。事情を抱えた人々が、ちょっとした勘違いから笑いと感動の連鎖を引き起こしていくのは三谷監督の真骨頂かと。
クスっとさせる笑いをはさみつつも、登場人物が本当は寂しかったり、しんどかったり、悲しかったりするところが共感を生み、だからこそ感情移入できるのでしょう。特に元妻に見栄を張って嘘をついたために恥をかくホテルマン(役所広司)のエピソードは胸が痛い。鹿の帽子をかぶる姿が切なくて……。
ただ、できれば実在のホテルでロケしてほしかったですね。セットは豪華で凄いのですが、ホテルの独特の非日常的空間はセットでは醸し出すことはできないと思う。ワンシーンワンカットの長回しなので難しいのかもしれないけど、オールセットだと、どうしても舞台を見ているみたい。そこが評価の分かれ目かも。
監督・脚本: 三谷幸喜
出演: 役所広司、松たか子、佐藤浩市、香取慎吾、篠原涼子、戸田恵子、生瀬勝久、麻生久美子、YOU、オダギリジョー、角野卓造、寺島進、浅野和之、近藤芳正、川平慈英、堀内敬子、梶原善、石井正則(アリtoキリギリス)、榎木兵衛、奈良崎まどか、田中直樹、 八木亜希子、原田美枝子、唐沢寿明、津川雅彦、伊東四朗、西田敏行、山寺宏一(声の出演)
※お次は英国発、ノーテンキでかっこいいサスペンス群像劇です。