東洋医学からみる冬季うつ病の原因と症状
こうした医学的な予備知識を踏まえ、東洋医学的な観点では冬季うつ病をどう捉えることができるのか考えてみましょう。東洋医学における冬季うつ病の原因は、風・寒・暑・湿・燥・火の六気(ろくき)が気候の急激な変化により邪気(じゃき)となった外因(がいいん)と、喜・怒・思・憂・悲・恐・驚といった感情を構成する7つの要素である七情(しちじょう)のバランスが崩れたことによって発生する内因(ないいん)であると考えられます。
外因では、身体を暖める源である太陽に当たらなくなることで、邪気から身体を防衛する「陽気(ようき)」の働きが弱まります。すると、秋の長雨の時期に「湿(しつ)」が邪気に変化した「湿邪(しつじゃ)」が体内に侵入しやすくなると考えられます。湿邪は重く停滞し、しつこい頭や腰・四肢の重だるさの原因となります。
またこの湿邪は脾臓や胃といった内臓に対しても影響を及ぼします。脾臓や胃は五行思想(ごぎょうしそう)の分類では土(ど)の性質を持ちます。また、食物の味を五行で分類すると「甘(かん)」、つまり甘いものも同様に土に分類されるのですが、湿邪により犯された状態では、脾胃のエネルギーを補給するために甘いものを食べたくなると考えられます。これはまさに冬季うつ病の特徴である甘いものを欲するというものと一致しています。
東洋医学の世界観では、内臓は感情とも密接に関係していると考えられています。湿邪が最も影響を及ぼす脾胃は同じ土に分類される「思(し)」という感情と最も深く関わっています。「思」は深く考え込む、思い悩むという感情です。
「思」が湿邪によって影響を受けると、さらには精神活動を司る神気(しんき)の一種である「意(い)」を傷つけ、この状態になると物思いに苦しみ、こころが落ち着かなくなると考えられています。また、このように「意」が傷つき神気が乱れた状態は、身体がだるく眠気があるのに寝つけないといった不眠の症状を呈するとも言われています。
東洋医学的な観点から冬季うつ病をみると、
- 身体を防衛する陽気が損なわれる
- 湿邪が体内に侵入する
- 湿邪により内臓の脾胃や感情の「思」が影響を受ける
- 「思」の影響により「意」が傷つけられる
ツボのマッサージ・お灸などで行う冬季うつ病対策
こうしたことから、ツボを用いて冬季うつ病を予防するにはまず身体を守る陽気を充実させることが重要です。そのためには身体の陽気が集中するポイントであると言われる「大椎」というツボにやさしくマッサージをすることやお灸、シャワーなどで温めることなどが有効だと言えるでしょう。さらに、マッサージなどで脾胃のエネルギーを高めておくことで、「思」への影響を防ぐことができると考えられます。
「太白」には脾臓のエネルギーを回復する効果があるとされています
胃の経絡に属する「足三里」は脛骨と腓骨の間とされている
日頃から日光に当たっておくことや生活リズムを整えること、兆候を感じたら医療機関を受診し適切な医療を受けることが大切であることは言うまでもないのですが、東洋医学の観点ではこうした手軽にできることで冬季うつ病を予防することが可能だと考えられます。セルフマッサージやツボを押す道具などでも簡単にできますので、試してみてはいかがでしょうか。