ツボ・経絡/季節の悩みに効くツボ

経絡・ツボで対策する冬季うつ病(2ページ目)

11月頃から日が沈む時間が早くなり、身体に日光があたる時間が減少することで発生すると考えられている「冬季うつ病」。ただの疲れだと軽く考えて対処を怠ると、長い場合は3月頃までうつ傾向が続いてしまうことも。今回は東洋医学の観点から考える冬季うつ病とツボを用いた予防法について解説します。

山木 伸允

執筆者:山木 伸允

鍼灸マッサージ師 / 鍼灸療法・ツボガイド

東洋医学からみる冬季うつ病の原因と症状

こうした医学的な予備知識を踏まえ、東洋医学的な観点では冬季うつ病をどう捉えることができるのか考えてみましょう。

東洋医学における冬季うつ病の原因は、風・寒・暑・湿・燥・火の六気(ろくき)が気候の急激な変化により邪気(じゃき)となった外因(がいいん)と、喜・怒・思・憂・悲・恐・驚といった感情を構成する7つの要素である七情(しちじょう)のバランスが崩れたことによって発生する内因(ないいん)であると考えられます。

外因では、身体を暖める源である太陽に当たらなくなることで、邪気から身体を防衛する「陽気(ようき)」の働きが弱まります。すると、秋の長雨の時期に「湿(しつ)」が邪気に変化した「湿邪(しつじゃ)」が体内に侵入しやすくなると考えられます。湿邪は重く停滞し、しつこい頭や腰・四肢の重だるさの原因となります。

またこの湿邪は脾臓や胃といった内臓に対しても影響を及ぼします。脾臓や胃は五行思想(ごぎょうしそう)の分類では土(ど)の性質を持ちます。また、食物の味を五行で分類すると「甘(かん)」、つまり甘いものも同様に土に分類されるのですが、湿邪により犯された状態では、脾胃のエネルギーを補給するために甘いものを食べたくなると考えられます。これはまさに冬季うつ病の特徴である甘いものを欲するというものと一致しています。

東洋医学の世界観では、内臓は感情とも密接に関係していると考えられています。湿邪が最も影響を及ぼす脾胃は同じ土に分類される「思(し)」という感情と最も深く関わっています。「思」は深く考え込む、思い悩むという感情です。

「思」が湿邪によって影響を受けると、さらには精神活動を司る神気(しんき)の一種である「意(い)」を傷つけ、この状態になると物思いに苦しみ、こころが落ち着かなくなると考えられています。また、このように「意」が傷つき神気が乱れた状態は、身体がだるく眠気があるのに寝つけないといった不眠の症状を呈するとも言われています。

東洋医学的な観点から冬季うつ病をみると、
  • 身体を防衛する陽気が損なわれる
  • 湿邪が体内に侵入する
  • 湿邪により内臓の脾胃や感情の「思」が影響を受ける
  • 「思」の影響により「意」が傷つけられる
という状態であると考えることができそうです。

ツボのマッサージ・お灸などで行う冬季うつ病対策

こうしたことから、ツボを用いて冬季うつ病を予防するにはまず身体を守る陽気を充実させることが重要です。そのためには身体の陽気が集中するポイントであると言われる「大椎」というツボにやさしくマッサージをすることやお灸、シャワーなどで温めることなどが有効だと言えるでしょう。

さらに、マッサージなどで脾胃のエネルギーを高めておくことで、「思」への影響を防ぐことができると考えられます。

脾臓のエネルギーを回復させると言われる「太白」の位置

「太白」には脾臓のエネルギーを回復する効果があるとされています

まずは脾に属するツボである「太白」へのマッサージをやってみましょう。このツボは足の親指の付け根にある骨の隆起を横から触り、すぐ後側のくぼみにあります。力を抜いていると柔らかく感じますが、親指を動かすと硬く感じるところであれば間違いないと思います。この場所を心地良い程度の力で押します。この時、息を吐きながらゆっくり押すと良いでしょう。

 

「足三里」は胃の経絡のエネルギーを回復させると言われています

胃の経絡に属する「足三里」は脛骨と腓骨の間とされている

次に「足三里(あしさんり)」という胃の経絡に属するツボをマッサージします。「足三里」は膝のお皿の真下にあるスネの骨の隆起の外側をさわっていくと腓骨という骨にぶつかります。その腓骨とスネの骨の隆起の間にあるくぼみが「足三里」になります。こちらも「太白」と同様に息を吐くときに優しく押し込むようにマッサージすると良いと思います。またどちらのツボに対してもお灸などで温めることも有効だと言われています。

日頃から日光に当たっておくことや生活リズムを整えること、兆候を感じたら医療機関を受診し適切な医療を受けることが大切であることは言うまでもないのですが、東洋医学の観点ではこうした手軽にできることで冬季うつ病を予防することが可能だと考えられます。セルフマッサージやツボを押す道具などでも簡単にできますので、試してみてはいかがでしょうか。
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