チャン・ユジョンが語る、韓国musicalの“初恋”熱(2ページ目)

ヒロインには自身を(ちょっぴり)投影

――ヒロインはあなたの分身でしょうか？　特に映画版ではヒロインが演出家という設定になっていて、そう感じながら拝見しました。

「そういう感覚はありますね。(映画版でヒロインを演じた)イム・スジョンさんは、しばらく私に密着して役を研究していました。その結果、中性的……というかちっとも女らしくないあの映画版ヒロインが誕生したのかもしれません(笑)。ただ、それは私の個性によるもので、女性演出家がみんなそうだというわけではありません。少し前まで、韓国は保守的で女を捨てないとできない職業もありましたが、私の世代は“女だから”と,、演出家として差別されるような苦労はしていないんです」

――『兄弟～』では自ら演出も担当されていましたが、今回の来日公演は別の方の演出になるのですね。

「イ・ジョンソクさんが担当されます。もともと初演でも違う演出家が演出され、私が手掛けた時期もありましたが、今は私の手は離れています。この作品は再演の度に演出をがらりと変え、鮮度を保っています」

――来日にあたり、日本の観客にはどんなことを感じてほしいでしょうか？

「現在、本作は上海でも上演され、おかげさまで好評をいただいています。国を問わず、ご覧いただくことで純粋な時代を思い出したり、今自分の周りにいる人をより大切に思える作品なのではないかと自負しています。日本のお客さまにもぜひそう感じていただけたら嬉しいです」


韓国ではここ数年のうちに創作ミュージカルが爆発的な勢いで上演されており、ユジョンさんは「芸術が産業化している過程」に今、自分が関わっている喜びを感じると同時に、「量より質を高めなければ」と自分を戒めているそうです。

10年未満のキャリアで作品が2本も映画化されるほどの順風満帆ぶりにもかかわらず、“一度でも質の低い作品を見せてしまえばミュージカルは見捨てられる”と危機感を常に持ち、作品に向かい合っているユジョンさん。映画『嫌われ松子の一生』が大好きで、いつか中島哲也監督とミュージカル映画を作るのが夢だとか。今後も韓国ミュージカルをリードしていくであろうユジョンさんを世に送り出した、キュートなラブコメ・ミュージカル『あなたの初恋探します』、まずは必見です！

＊公演情報＊
『あなたの初恋探します』2013年11月13～30日＝アミューズ・ミュージカルシアター