ことばから形へ
建築の用語の中には動植物に関することばや仏教からきたことばなど様々あります。例えば和室の襖などで、レールの役目をしている上部の溝は鴨居と呼ばれ、下部は敷居です。これは水鳥からとった鴨(かも)と鴫(しぎ)からきた名称です。さらに鴨居の上には、天井との間に換気や通風のために設けられた欄間(らんま)があります。これは蘭の花を飾り、そこから香ってくる匂いを楽しんだことからつけられた名称といわれています。こうしたことばの中には、住まいづくりにあたってのヒントがたくさん隠されているような気がします。
玄関のはたす役割を考えてみる
玄関は「玄妙なる関門」という意味です。玄妙は上品でやさしく優雅に、関門は関所をあらわします。つまり外の社会や世間で嫌なことがあっても、玄関に入った瞬間から嫌なことは忘れ、家族との団らんを囲ってください、という外と内の心を切り替える場なのです。したがって心のスイッチを切り替える場としての雰囲気づくりを心がけることです。例えば玄関から前方に大きなはめ殺しの窓を設けて樹木をみせたり、又は玄関に地窓を設けて花壇をみせたり、ほっとやさしい空間の演出です。もちろん窓などがとれない場合は壁を利用して一輪差しを飾ることでもよいでしょう。たとえ狭いスペースであっても少しの工夫をすることで会話が誘発され、家族の団らんへとつながっていく、その役割をはたすのが玄関なのです。玄関の丸太ベンチ(設計:佐川旭建築研究所)