行政書士試験/行政書士のキャリア・開業

資格取得後の独立体験記 第14回「テレビ出演への道」(2ページ目)

開業して5年くらいたったころでしょうか。世間では、熟年離婚やDVなど夫婦の問題がよくマスコミに取りあげられていました。私は離婚協議書を作成する日々を送っていました。そんなある日、突然、連絡が入ったのです。

山本 直哉

執筆者:山本 直哉

行政書士ガイド

苦悶

しかし、ただ一点の思いつきが、その頭の回転を止めます。それは、「これまでの私の依頼者は不快に思わないだろうか」ということです。もし、これが自分のことだと思われたらどうしよう。さらに、テレビ制作の関係で、演出か何かで面白おかしく編集でもされたら……。いや、しかし、こんなチャンスはもうないかもしれない。でも、……。何度となく、自分で問答を繰り返したのです。

そのときの苦悩は今でも忘れていません。宮崎駿さんが話に出たので、宮崎作品で例えるなら『カリオストロの城』のラストシーンで、クラリスを抱きしめるか否かで苦悶するルパンのようでした。

結局、私は出演依頼をお断りしたのです。

再び、チャンスは到来

それから、数年後。また、人を介してテレビ番組への出演を打診されました。離婚に関する番組のコーナーの一部の監修のようでした。正直、内容的には、是非、参加したかったのです。それは、扱う分野が、これまで私が開業以来取り組んできた分野だったからです。

しかし、番組の意図を聞いてがっかりします。なぜなら、私の離婚に関する考えに反対するものだったからです。簡単に言えば、離婚は夫が悪いと言われることが多いが、今回は妻が悪い場合を特集したいというものです。

確かに、妻に離婚原因がある場合もあります。ただ、離婚によって圧倒的な不利に立たされるのは女性です。離婚後の母子家庭や、路頭に迷う妻の経済的困窮を眼にしてきた私にとっては、気がすすみませんでした。

結局、またお断りをしました。制作会社が次に打診したのも行政書士でした。その行政書士は、番組出演後、事務員を複数雇わないといけなくなるくらい、大盛況ということを風の噂で耳にしました。

このときは、以前のようにテレビに対する思いは冷めていました。経営の安定を考えるならば、是非とも応じるべきでした。しかし、士業は公職であり、営利追求だけを目指すものではないということが頭から抜けませんでした。

最後に

こうして私はテレビ出演という大きなビジネスチャンスを逃しました。それは熟慮した結果でした。自分が正しいとも間違ったとも思ってはいません。自分に合った選択をしたに過ぎません。多かれ少なかれ士業はこういった悩みに何度か経験するものだと思います。皆さんはどうお考えでしょうか。

さて、話は変わりますが、次回は、士業であることを活かして、士業とは違う別のステージにも挑戦するお話です。当時の私は、いろいろなことに挑戦しようと思っていたのです。次回は、「行政への道」です。
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