整形外科学の問題傾向
整形外科学では、骨折の関する問題、神経障害や血流障害に関する問題。股関節や膝関節などの変形性関節症の問題。椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの腰部疾患に関する問題。そして、骨粗鬆症などの骨形成に関する問題等が出題されています。近年の傾向として、CT、MRIなどの画像所見から、どういった状態なのか? もしくは、画像所見のようになった原因は? などの問題の出題率が高くなっています。その他、高齢者に起こりやすい骨折が過去問では多かったのですが、第48回国家試験では、小児に多い骨折に関する問題も出題されています。整形外科学の過去問題と解答
過去問題 第52回(2017年)中心性脊髄損傷について正しいのはどれか。2つ選べ。
- 高齢者に多い。
- 骨傷に伴って生じることが多い。
- 頸椎の過屈曲によって発生することが多い。
- 肛門括約筋の収縮が障害されることが多い。
- 下肢より上肢機能が強く障害されることが多い。
この問題の答えは【1,5】になります。中心性脊髄損傷は、強い外力などによる頸部過伸展によって生じ、骨の損傷は少なく脊髄の中心部に障害が起こります。高齢者は転倒時の発症が多く、脊髄中心部の障害のため上肢の神経連絡路が障害されやすいですが、肛門などの仙髄領域の機能は保たれます。
過去問題 第52回(2017年)
変形性膝関節症について正しいのはどれか。
- 男性に多い。
- 膝関節液は混濁している。
- 内側楔状足底板が有用な場合が多い。
- 初期の疼痛は動作開始時に出現しやすい。
- エックス線像では外側関節裂隙が狭小化している場合が多い。
この問題の答えは【4】になります。変形性膝関節症は、整形疾患の問題では代表的部類ですので、その特徴の復習は必須になります。その特徴として、中年期以降の女性、とくに肥満女性に多く、動作開始時に疼痛がおこりやすいです。膝の関節液は淡黄色で混濁はしていません。他、選択肢3の「内側楔状足底板が有用な場合が多い。」についてですが、変形性膝関節症では、内反膝(O脚)の人が多く、内反膝の場合、外側楔状足底板が有用となります。また、エックス線像では内側の外側関節裂隙が狭小化が認められます。
過去問題 第51回(2016年)
頸椎後縦靭帯骨化症の症候で正しいのはどれか。
- 鉛管様固縮
- 間欠性跛行
- 膀胱直腸障害
- 下肢腱反射消失
- Wrightテスト陽性
この問題の答えは【3】になります。頸椎後縦靭帯骨化症では、骨化した靭帯により脊髄の圧迫が起こり、四肢麻痺や深部腱反射の亢進、病的反射の出現、膀胱直腸障害などが出現します。その他の選択肢ですが、1の鉛管様固縮は、パーキソニズムの症状となります。2の間欠性跛行は、閉塞性動脈硬化症や腰部脊柱管狭窄症で起きる症候で、疼痛による歩行困難を起こします。4の下肢腱反射消失は、下位ニューロンの障害で起こるため、上位ニューロンの障害を起こす頸椎後縦靭帯骨化症では出現しません。5のWrightテストは、胸郭出口症候群で陽性となるのテストです。
過去問題 第50回(2015年)
75 歳の女性。交通事故により受傷。救急搬送時のエックス線写真を別に示す。遠位骨片を短縮転位させる主な筋はどれか。
- 中殿筋
- 小殿筋
- 腸腰筋
- 上双子筋
- 大腿直筋
この答えは【5】です。問いについて、骨折部をまたいでいる筋肉による影響で転位を起こしていると考えるとわかりやすいと思います。1の中殿筋と2の小殿筋は大腿骨大転子に停止し、3の腸腰筋は大腿骨小転子に停止。4の上双子筋は大腿骨転子窩に停止しますので、骨折部をまたぎません。大腿直筋は骨折部をまたぎ脛骨粗面に付着しますので、短縮転位に影響します。
過去問題 第50回(2015年)
27 歳の男性。企業のラグビー選手として試合中に転倒し、左肩痛を訴えて受診した。来院時のエックス線単純写真を別に示す。
A.この写真から判断できる所見はどれか。
- 肩腱板断裂
- 肩甲上腕関節脱臼
- 肩鎖関節脱臼
- 鎖骨骨折
- 上腕骨骨頭骨折
この答えは【3】です。画像から考えられる状態を選択する問題ですが、肩甲骨の肩峰と鎖骨が関節をなす肩鎖関節が上方に脱臼し、肩鎖靱帯、烏口肩鎖靱帯が断裂していることが読み取れます。他の選択肢については、それと読み取れる所見はなく、3が選択肢として正しいと言えます。
B.患者はスポーツ選手を継続することを希望している。治療として適切なのはどれか。
- 安 静
- 手術療法
- 超音波療法
- ギプス固定
- ホットパック
この答えは【2】です。画像所見から前述の問題で所見を読み取り、患者の希望に対し、必要な治療を考察する問題となります。1の安静では、転位が起きている為、変形治癒してしまうので間違い。3の超音波療法は、疼痛緩和や治癒促進のために行うため、手術後の適応が多い。4は、四肢骨折時の整復後に多く用いられる。5のホットパックは、受傷後の急性期は禁忌のため間違いになります。
次のページでは、リハビリテーション概論の問題傾向について説明します。