政治色や彼らの思想や観念を反映させて製作されたアルバム
■アルバム名ヨシュア・トゥリー
■バンド名
U2
■おすすめ理由
1987年にリリースされたアイルランドの世界的ロックバンドU2による5作目のアルバムです。
全米チャートで9週連続1位を獲得し、全世界でのセールスは2000万枚以上、グラミー賞では最優秀アルバム賞、最優秀ロック・グループ賞を獲得しています。
それまでの作風はヨーロッパ圏の、特にアイリッシュらしい荒涼さと刺すようなエッジの利いた音作りをメインにしていた彼らでした。
ところがこのアルバムでは、アメリカ文化への傾倒を試み、ブルースやカントリー、ゴスペルといったルーツ・ミュージック探訪に目覚め、積極的に吸収しています。
やがて従来には無かった色彩と緩急さを構築させてしまったところが大きな特徴です。
バンドの姿勢は変わることなく、政治色が反映され、また、彼らの持つ思想や観念を反映させた曲作りが成されています。
アメリカ政府の対ニカラグア政策(コントラ支援)を告発する「ブレット・ザ・ブルー・スカイ」や、イギリスの炭鉱労働者がモチーフの「レッド・ヒル・マイニング・タウン」、そしてチリのピノチェト政権下の行方不明者をテーマにした「マザーズ・オブ・ザ・ディサピアード」といった硬派な姿勢を貫いた楽曲を揃えています。
快楽や娯楽といったエンターテイメント性を前面にするのが音楽の要素ではありますが、彼らの音楽からは、もっと使命感を抱いた「名も無い、小さな存在、消えてしまいそうな命」の為に、音楽で尽力し続ける正義感を伺い知るのです。
そんな捉え方をしながら聴くと、60年代に幻想化した「ロックで世界を変える」という意義は、ちゃんと今でも生き続けている気配があるのです。
「ローリング・ストーン誌の選ぶオールタイム・ベストアルバム500」に於いて27位にランクインされています。