ロックの中で、似たようなジャンルとしてよくひとまとめにされるのがハードロックとヘヴィメタル。確かにサウンドは似ているし、CDショップに行っても同じコーナーに置いてあることが多い。しかし、実際にアーティストを思い浮かべてみると、ヘヴィメタルといったほうがしっくり来る人(バンド)と、ハードロックだというほうが似合う人がいるのも事実。それぞれのジャンルはいったいどんな定義がされているのだろうか。

似ていて当然?

Come on Feel the Metal
80年代を中心に、ハードロック/ヘヴィメタルのヒットナンバー36曲を集めたコンピレーション盤『Come on Feel the Metal』。どこかで耳にしたことのある曲がぎっしり詰まっていて、ハードロックマニアでなくても十分楽しめる。
ハードロック、ヘヴィメタルの定義としてもっとも一般的なのは、ヘヴィメタルの起源から考える方法だろう。最初にハードロックがあり、そしてハードロックにパンクが結びついてより攻撃的で尖ったサウンドになったり、グラムロックが結びついて衣装やメイクなどのルックスを強調したりして、ヘヴィメタルが生まれてきた、という考え方だ。これはわかりやすいし、納得がいく。似ていて当然、というわけだ。

ただ、現在のヘヴィメタルのスタイルはある日突然誕生したわけではなく、徐々に変化して今日のスタイルが出来上がってきたものであるため、とくにヘヴィメタルが出現してきたとされる70年代については境界線が非常に曖昧だ。たとえばディープ・パープルとレッド・ツェッペリンはどちらもハードロックの元祖とされているが、ディープ・パープルのほうは、主要メンバーのリッチー・ブラックモアがその後レインボーを結成し、これがその後のヘヴィメタルのスタイルに大きく影響を与えているし、ディープ・パープルのフォロワーにはヘヴィメタルのアーティストも多い。そのためディープ・パープルがへヴィメタルの象徴的存在として扱われることも多い。このあたりがややこしいところだ。

ちなみにヘヴィメタルという言葉は、ステッペン・ウルフの名曲「Born to be Wild」の歌詞で使われ、その後一般に広まったというのが定説になっている。

音楽の中身の違いは?

A Tribute to Led Zeppelin
90年代の実力派ミュージシャンが結集した、レッド・ツェッペリンのトリビュートアルバム『A Tribute to Led Zeppelin』。ハードロック/ヘヴィメタルにはトリビュート盤も多数制作されている。
ヘヴィメタルがハードロックから変化して出来たものだとすると、両者の音楽が似ているのも不思議はない。しかし、音楽の中身にどんな要素が含まれているかによって明確に区別すべきだと主張する人たちもいる。たとえば、ブルースやジャズの要素が含まれているのがハードロック、リズムがより精密でテクニカル、様式美を重視するのがヘヴィメタル、とする考え方だ。

もともとハードロックはブルースから生まれてきたものだ。ブルースバンドだったヤードバーズにいたジミー・ペイジが、「ブルースをすごくでかい音で激しくやったらカッコいいだろうな」と思ってレッド・ツェッペリンを結成し、そこからハードロックが生まれたという話もあるくらいなのだ。またブルースはジャズともつながりがある。だから、ハードロックにはブルージーな雰囲気があったり、ジャズのような自由なリズムやコードが使われたりしているというわけだ。

これに対し、へヴィメタルにはクラシックやプログレッシブロックの要素が聴き取れるし、リズムの面からは、強烈な4つ打ちでへヴィなビートを強調するところは、ディスコなどのダンスミュージックの影響もありそうだ。だからリズムがよりかっちり決まっていて、展開の美しさや華麗な演奏テクニック、様式美が重要な要素になるのがヘヴィメタル、ということになるのだ。
こういった考え方で見ていくと、ハードロックの中で、音楽的なスタイルやルックスなど、ある一定の特徴があるものをヘヴィメタルと呼ぶ、という定義が、おぼろげながら見えてくる。ただ、これ以外にも様々な考え方があるし、同じアーティストでも見る角度によってどちらとも断言しにくいこともある。音楽ジャンルに境界線を引くというのはなかなか難しいものだ。

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