再評価する声も多いザ・クラッシュのアルバム
■アルバム名Sandinista!
■アーティスト名
The Clash
■おすすめ理由
70年代後半のロンドンでは、労働者階級の若者達のフラストレーション発散の為に、パンクロックはその地に根付いていました。
それは音楽的ルーツや伝統から継承されるような格式高い音楽という事ではなく、彼らにとっては何でもよかったわけです。
日々の不満をぶつける場所と題材さえあれば、そしてちょっとだけ目立ったアイコンやシンボル的存在があれば、その場しのぎに便乗出来るから……多くの若者は騒いで騒いで騒いだ、只それだけで終わりました。
しかしロックが時代と供に大きく成長することを知り、一部のパンクロッカーは、すっかり根付いた場所の足かせを外し始めました。
ザ・クラッシュの4作目のスタジオ・アルバム「サンディニスタ」は80年の暮れにリリースされ、3枚組、各面に6曲ずつの計36曲収録、しかもほぼ1枚分相当の格安な値段で販売されたことで話題となりました。
その背景には、お金が無くてアルバム一枚やっと買えるようなロンドンの中産階級の若者達への配慮という、彼らなりのファンへの思いやりがありました。
先ずその時点で、単なる憂さ晴らしでは音楽をやっていないという心意気を持った人達だったと言えます。
当初は賛否両論で、かつての生粋なパンクロックから相当逸脱し、レゲエ、ジャズ、ゴスペル、ロカビリー、フォーク、ダブ、R&B、カリプソ等の世界音楽を凝縮したもの。
受け入れ難く去っていく者も多くいました。
しかし、独裁者アナスタシオ・ソモサ・デバイレを政権から引きずり下ろした、ニカラグアの左翼ゲリラ組織「サンディニスタ民族解放戦線」から由来したアルバムタイトルの通り、世界情勢や社会に対する矛盾、政治批判的内容は更に拍車が掛かったものへと仕上がっています。
またレゲエやダブ、ラップとパンクの融合を試みた実験性の高さは、後世のパンクロックへと受け継がれ、それはもはや定番と化しています。
先手を打って新しいロックの流れを作った発展的作品です。
あの頃は肌に合わなかった世代が一巡し、昨今このアルバムを再評価する声も多く、ビートルズの「ホワイトアルバム」やストーンズの「メインストリートのならず者」に匹敵する、ボリューム感と内容だと讃えています。