「孤独と叫び」がテーマの記念すべきアルバム

■アルバム名
ジョンの魂

■アーティスト名

John Lennon/Plastic Ono Band

■おすすめ理由
1980年12月8日、一人の男が銃弾に倒れ、クリスマスのカラフルな電飾は、瞬く間に衝撃と憤りの灯火に変貌しました。
その名をジョン・レノンといい、人々は彼を、平和の使途だなどと崇めました。
しかし、改めてこのアルバムの一部始終を聴くと、そんな幻想など一掃してくれます。

全11曲(ミレニアム・エディションではボーナス・トラック含めて全13曲)ビートルズという巨大な化け物から、個人としての出発をした記念すべき一枚でした。
あのバンドの痕跡、影響力、それまではどうにかして4分割に対処できたはず。
しかしここから以降、ジョンという個別のカラーについては、一切合財を彼自身が受け入れざるを得なくなり、それだけでも重責であったと思うのです。
その重責の処方箋として、ジョンは本心のまま、叫ぶしかなかったのでしょう。

このアルバムのテーマは愛や平和なんかじゃなく「孤独と叫び」です。
親の愛情を知らない憤りをテーマにした「Mother」から始まり、トーンの暗いタイトルばかりが並びます。
例えば、ボブ・ディランを意識したかのようなトラディショナル・フォーク風の「Working Class Hero」は、社会的な苦痛を曝け出し、悲壮感のまま終わります。
アルバム全体で使用される楽器も、ギター、ベース、ピアノ程度のシンプルさ、隙間の多い音空間へ、ジョンのヴォーカルやシャウトが電流のように伝わり、特に「GOD」という曲はその究極です。
“神なんて、苦痛の度合いをはかる観念にすぎない”“魔法、聖書、タロット、イエス、ケネディ、ブッダ……エルヴィス、ジンマーマン(ボブ・ディランの本名)……”挙句の果てにはビートルズだって信じないとまで言い切っています。
そして「自分だけを信じる」と叫ぶのです。

人は悲しみを知ると、優しくなれると言われています。
その一歩手前では、深く埋もれてしまうほどに弱々しい自分を知らなければなりません。
底なし沼のような絶望から弱った自分を引っ張りあげる起動力、それは「怒り」しかない、怒りが心に着火して馬力となり、前へと突き進めてくれる!そんな感情をぶつけ合うという手立てでリアルに訴えてくるアルバムです。



※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。