宅地建物取引業法詳説〔売買編〕の第20回は、第37条の2(事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等)、いわゆる「クーリング・オフ制度」についてみていくことにしましょう。

 (事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等)
第37条の2  宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
   買受けの申込みをした者又は買主(以下この条において「申込者等」という。)が、国土交通省令・内閣府令の定めるところにより、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して八日を経過したとき。
   申込者等が、当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つたとき。
 申込みの撤回等は、申込者等が前項前段の書面を発した時に、その効力を生ずる。
 申込みの撤回等が行われた場合においては、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければならない。
 前三項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。


不動産の売買にもクーリング・オフはあるが…

通販などではお馴染みのクーリング・オフ制度ですが、不動産の売買にもこれが適用されるケースがあります。その要件を定めたのが第37条の2による規定です。

ただし、対象となるのは宅地建物取引業者が売主の場合だけです。売主業者が消費者との間で直接に契約をするときだけでなく、他の宅地建物取引業者の代理または媒介によって契約をするときにも適用されますが、売主が個人(または宅地建物取引業者ではない法人)のときには一切適用されません。

また、売買契約だけが対象であり、賃貸借契約や建築工事請負契約などについては本条の適用がありません。賃貸借契約などの成立をめぐってトラブルが生じれば、他の法律などに基づいて処理をすることになります。


適用ケースは限定的

不動産の売買契約についてクーリング・オフが適用されるのは、宅地建物取引業者が売主で、かつ、喫茶店やレストラン、屋外(現地販売所のテント張りや仮設小屋などを含む)、路上、その他宅地建物取引業者とは関係のない店舗や施設などで買受けの申込みや売買契約の締結をしたときです。

売主業者または代理業者、媒介業者の事務所(本店、支店、継続的に業務ができる施設)のほか、宅地建物取引主任者をおくべき案内所(屋内に限る)、モデルルーム、モデルハウスなどで買受けの申込みや売買契約の締結をしたときにはクーリング・オフの適用がありません。

また、買主自ら「自宅に来てくれ」「勤務先に来てくれ」と宅地建物取引業者を呼び出し、そこで説明を受けたり、買受けの申込みや売買契約の締結をしたりした場合も対象外となります。

さらに宅地建物取引業者の事務所などで買受けの申込みをした後に、他の場所で売買契約の締結をした買主にもクーリング・オフは適用されません。

一般的な一戸建て住宅やマンションを買おうとする消費者が、クーリング・オフの対象となる売買契約に遭遇するケースはあまりないでしょう。問題が起きやすいのは別荘地の販売や、投資物件の販売などにかかわる契約のときかもしれません。

数か月前に某地方都市で、ファミレスを何軒もはしごして連れ回された揚句、契約を迫られたという事件も報道されていましたが…。


クーリング・オフの適用は8日間

不動産の売買契約にかかわるクーリング・オフ制度が適用されるのは、「クーリング・オフができる旨を業者より告げられた日から8日間(告げられた日を含む)」が期限となります。もちろん、クーリング・オフの適用があるにも関わらず、その旨が告げられなければずっと適用されることになります。

ただし、たとえ契約締結の数日後だったとしても、売買代金の全額を支払ったり物件の引き渡しを受けたりした後は、クーリング・オフによる契約の解除などはできません。

また、8日間を過ぎたらクーリング・オフができないのであって、宅地建物取引業法の他の規定や、他の法律に基づく契約解除ができなくなるわけではありません。


クーリング・オフの通知は書面で

万一、クーリング・オフの適用がある買受けの申込みや売買契約の締結に遭遇して、この権利を行使しようとする場合には、買主(または申込み者)は「書面によって意思表示をすること」が法律で定められています。

この場合の書面とは、証拠力の必要性から「配達証明付内容証明郵便が適当である」とされているほか、この書面を発した時点で効力が生じることになっています。

それはともかくとして、消費者が普段は目にすることのない宅地建物取引業法に「消費者側の義務」が規定されているのですから、ちょっと厄介ですね。


クーリング・オフの実効性は?

買主(または申込み者)がクーリング・オフの権利を行使した場合、宅地建物取引業者は受領している手付金や申込み証拠金などの金銭を速やかに返還しなければならないこととなっています。

ところで、購入申込みについてはクーリング・オフ制度の有無に関わらず、いつでも撤回できるものと考えるのが一般的で、撤回により申込み証拠金も必ず返還されるべき性質のものです。もしそれに応じない宅地建物取引業者がいたとすれば非常識ともいうべきで、行政処分の対象となってもおかしくありません。

一方、売買契約の締結についても、常識的な宅地建物取引業者であれば、クーリング・オフの対象とならないように十分な対処をする(きちんと業者の事務所などで契約をする)はずであり、クーリング・オフの対象となるときは何らかのやむを得ない事情があるか、あるいは非常識な業者のどちらかでしょう。

そう考えると、いざクーリング・オフをしたときに、速やかに手付金が返還されるのかどうか、ちょっと疑問ですね。消費者の立場としては「クーリング・オフの対象となるような契約や申込みには応じないこと」が大切です。


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