山あり谷ありの人生を生きて行く 『きらきらひかる』
■監督松岡錠司
■原作
江國香織
■出演
薬師丸ひろ子(岸田笑子)、豊川悦司(岸田睦月)、筒井道隆(藤島 紺)
■おすすめのポイント
今年、巷で大人気のNHK連続ドラマ『あまちゃん』。主人公あきの人生を左右した大御所女優、鈴鹿ひろ美役を演じる薬師丸ひろ子。デビュー以来、多くの映画やテレビドラマに登場してきました。
中でも、印象に残るのは、1981年、映画『セーラー服と機関銃』での星泉のセリフ『カイカ~ン』であり、1990年、シャンプーのCMセリフ『チャンリンシャン』です。そして、その翌年の『きらきらひかる』の笑子です。
『きらきらひかる』はお互い、影の部分を相手に隠して見合いをし、打ち明けて結婚したアルコール依存症の妻と同性愛の夫、その夫の恋人をめぐる愛の葛藤を描いた作品です。
優しい夫、でも抱こうともしない夫、周囲の風当たりに合う夫婦。笑子と紺はライバルであり、睦月の存在の必要性を知る似た同志です。男女であるからこそ、醜い嫉妬ではなく、睦月の優しい人間性をリスペクトしています。
サイドストーリーにヒントが隠されています。例えば、愛犬が死に、新しい犬を飼うことに『そばにいてあげればいい』と笑子は賛成します。
また、行きつけのファミレスのウエイトレスにした「幸せ?」の質問には『生きて行くってことが幸せってもんよ』と意外な言葉が返ってきました。
『今はもう動かない……』。本編中、笑子が2度『大きな古時計』を口ずさんいます。『さびしい時も悲しい時も皆知っている』人生は山あり谷ありです。エンディングでは三人の顔にかぶって『大きな古時計』が流れます。相手を想うこと、人を愛することは、何かを考えさせてくれます。