野心を胸に生きた「小さなエヴァ」が大統領夫人になり、その生涯を終えるまでの物語
■作品名エビータ(1996年)
■監督
アラン・パーカー
■主演
マドンナ、アントニオ・バンデラス
■DVD販売元
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
■あらすじ
アルゼンチンの大統領、ホワン・ペロンの夫人として30代の若さでその生涯を閉じたエヴァ・ペロン。彼女の葬儀で嘆き悲しむアルゼンチンの国民達。……と、そこに現れた革命家、チェは国民達に問い質す。「お前達はこの女の本当の姿を知っているのか?」と。そしてチェの語りによって、貧しい街で生まれた小さな女の子が、どうやって女優になり、大統領夫人の地位にまで上り詰めたのか、その真実の生涯が語られていく……。
難航した映画製作
元は「オペラ座の怪人」や「キャッツ」の作曲家、ロイド・ウェバーが音楽を担当した英国発のミュージカル。映画化の話は比較的早い時期から出ていたものの、監督選びもヒロイン選びも難航し(当初、監督はオリバー・ストーンを予定)ヒロイン・エヴァ役は自らがこの役を演じる事を熱望し、激しく売り込みを掛けていたマドンナに決定。20年の時を経て、ようやく映画化が実現しました。強く脆いヒロインの一生を歌で表現
ミュージカルのヒロインというと、清純で真面目で……という印象が強かった時代に、のし上がる為ならどんな汚い手も、自分の体さえも使うという野心的な女性を主人公にして作られたミュージカルという事で当時は衝撃的でしたし、セクシーな流行歌手からアーティスト、そして女優へとステップアップしようとしているマドンナ本人の姿と重なり鬼気迫るものがありました。映画版の「エビータ」も舞台版と同様、基本的に台詞はなく全て歌で物語が綴られていきます。この作品で最も有名な場面、ペロンの大統領就任式、カサ・ロサーダのバルコニーでファーストレディの座を手にしたエヴァが歌う「アルゼンチンよ泣かないで」はアルゼンチンロケが敢行され、迫力満点のシーンになっています。
個人的にはマドンナの命を削るような熱演に加え、狂言回しとして登場するアントニオ・バンデラスの色気、大統領・ペロンを演じたジョナサン・プライスの英国仕込みの演技力もツボでした。
ロイド・ウェバーが技巧を駆使し、不協和音も恐れず攻めの姿勢で作った楽曲が耳に残る「エビータ」。90年代を代表するミュージカル映画だと思います!