マンションにとって、定期的に実施される大規模修繕工事はとても重要なものです。外壁の修繕だけでなく共用配管の取り換えやエントランスなど共用部分の改修、新規設備の導入など、その工事内容は多岐にわたりますが、今回は主に外壁の大規模修繕工事についてその必要性などを考えてみることにしましょう。
マンション外壁の大規模修繕工事をするときには、建物全体をシートで覆う場合が多いでしょう。窓やバルコニーからの眺望が長い期間にわたって遮られますが、それは仕方のないことと諦めるしかありません。将来、永遠に劣化しない素材や工法が開発され、それがリーズナブルに導入できるようになれば変わるかもしれませんが、現状ではマンションの宿命ともいうべきものです。
このとき、全体に作業用の足場が組まれますが、その設置費用はかなり高額になりがちです。大規模修繕工事費用は、単純に「外壁の修繕代と人件費だけ」というわけにはいきません。足場を組むことが難しい高層・超高層マンションでは、1~2フロア分の作業用足場を吊り下げて工事が行なわれる場合もあります。
大規模修繕工事の前に外壁の状態が入念にチェックされますが、外見上は異常がないようでも、専門の人が調べることで外壁タイルの浮きや塗装のはがれ、亀裂などが多く見つかります。
外壁に異常があったからといって、それが建設工事のときにおける工事不良や欠陥だというわけではありません。真夏の直射日光や冬の厳しい寒さ、暴風雨などにさらされ続ける外壁に経年劣化は避けられないのです。そのため、それらが悪化して建物本体に影響を及ぼす前に手当てをしてあげるのが大規模修繕です。そのタイミングが遅くなればなるほど症状の悪化が進み、工事費用がかさむことにもなりかねません。
しかし、大規模修繕工事が実施できればまだ良いほうかもしれません。世の中には修繕積立金の不足で大規模修繕や、それ以前に外壁の清掃なども行なわれないマンションが少なからず存在しています。タイル貼りの外壁でも、苔が生えて緑色になっていたり、雨垂れで変色していたりする場合があるでしょう。
外壁が見るからに汚れたマンションは、中古で売ろうとしてもなかなか思うような価格では売れないでしょう。それが洗い流せるような汚れのうちはいずれ何とかなるかもしれませんが、さらに放置されると鉄部のサビが流れて、外壁が茶色に変色するようになります。このような状態になってくると、外壁の変色だけにとどまらず、表面のコンクリートが中性化して剥落し、鉄筋が露出してくることも少なくありません。
これらは決して古いマンションだけに限った話ではなく、築浅のマンションでもよく見ると外壁にひび割れや亀裂などが生じていることがあります。建設時の工事不良が原因であれば、デベロッパーが責任を持って直してくれる場合もあるでしょうが、原因が特定できないなどの理由でそのままになってしまうことも考えられます。そのとき管理組合に十分なお金がなく直すことができないままであれば、やがて深刻な状況を引き起こす場合もあるでしょう。
外壁に大きな問題がなくても適切な時期に適切な大規模修繕工事ができること、さらに、大きな問題が生じたときはすぐに適切な対処ができることがマンションにとって重要な課題です。そのためには、修繕積立金などがしっかりと集められなくてはなりません。毎月の負担は少ないほうが良いものの、修繕積立金に関しては「安過ぎないこと」が大切です。
新築マンションの場合には、あらかじめ予定された大規模修繕工事の計画スケジュールや積立のシミュレーションなどをよく確認するようにします。中古マンションの場合には、今後の計画とともに「現在の積立額」など、会計内容を確認することも欠かせません。
関連記事
不動産売買お役立ち記事 INDEXこのマンションは実在する!!
クイズ!どっちが古いでしょう?