幸田文さんからのメッセージ
作家 幸田露伴の次女 文(あや)さんは住まいについてさまざまなエッセイを書いています。特に、木について「しつけ帖(平凡社)」でこんな風に書かれていました。「よく夫婦、親子、兄弟の間柄を関わり深いものとして語るけど、日々のくらしにこれだけ密接に役立ってくれた木材との関わりはいったいどう言ったらいいのだろう、うかんでくるのは ※冥加(みようが)という言葉である。木との関わりを天からうけた恵みというような、いわばお礼心である思いかたをしていたともいえ、それ故木をぞんざいに扱い粗末に使えばやがて冥加に尽きて困難がくるといって若い者をいましめた」
※冥加…知らず知らずのうちに受ける神仏からの恩恵
人と木の出会いは人の歴史とともにあります。木と接した時に感じる親しみや安らぎは、木のもつ独特の光沢や色調などの視覚的な特徴はもちろん、使い込んでいくと年齢が微妙に変化していく経年の美しさもあります。幸田文さんは冥加という言葉で木の魅力を語りました。
あらためて基本となる木について理解を深めてみましょう。