年上の男性に憧れを抱く、甘酸っぱい気持ち
■作品名早春物語(1985年)
■監督
澤井信一郎
■主演
原田知世、林隆三
■DVD販売元
角川書店
1980年代、ちょっと背伸びして友達と観に行く映画と言えば当時一世を風靡した「角川映画」の作品でした。あの頃自分が「年上の人LOVE」だった事もあり、映画館の客席で物凄くドキドキしたのを覚えています。
■あらすじ
高校の写真部に所属する沖野瞳(原田知世)が鎌倉で写真を撮っている時に車の移動をする、しないの小さな言い争いから接点を持つ事になった男・梶川(林隆三)。何度か理由を作って2人で会う内、次第に梶川に惹かれていく瞳。しかしある時瞳は悲しい事実を知ってしまう。梶川は亡くなった瞳の母親と昔付き合っていて、他の相手と結婚すると母を捨てた男性だったのだ……。
■お薦めの理由
何と言っても原田知世さんが本当にキュート! 10代後半の女子にありがちな「年上の男性に憧れ背伸びしてしまうモード」がとても丁寧に描かれていて、甘酸っぱい気持ちになります。梶川を訪ね、東京に行った瞳が待ち合わせをしている会社のロビーで1人、大人びたポーズの練習をしたり、彼に会う前に原宿のアクセサリーショップで一生懸命鏡に自分の姿を映したり……。10代だけに許される可愛い背伸びに元・女子もドキドキ……。
瞳の同級生・麻子(仙道敦子)が自分と彼とのキスの仕方を瞳相手に実演しようとするシーンや、実は教師と不倫している同級生(早瀬優香子)の皆とはちょっと違った憂いのある笑顔等、本当は1番輝いている時期なのに、本人達だけがその輝きに気付いていない10代特有の危うさも澤井監督らしい繊細な目線で紡がれています。
ワインで酔っ払った瞳を抱きしめ、キスをしてしまう梶川。梶川への気持ちを押さえ切れなくなりながら、母との関係を思い出の場所で問いただす決意をする瞳。モチーフになっている「春、来たりて去る」の一文。
少し危うくて思いっきり切ない17歳の恋心と、失った青春と幸せだった過去の輝きを瞳の中に見る梶川。結果、2人は別々の道を歩むことになるのですが、コレはやっぱり叶わぬ恋だからこそ美しい想い出、になるのですよね。
梶川の年齢に近い元・女子が見ても、10代の頃の自分を所々の場面に重ねて気持ち良く切ない感情に身を任せられるbitter&sweetな恋愛映画です。