「夢(虚構)と現実」をテーマに描かれたSFよりのアニメ映画
■作品名うる星やつら2 ビューティフルドリーマー
■監督
押井守
■声の出演
古川登志夫、平野文、神谷明、藤岡琢也、ほか
■DVD販売元
東宝ビデオ
■おすすめの理由
1984年公開作品。原作の『うる星やつら』自体はドタバタ恋愛ギャグコメディの色合いが濃いのですが、この映画はちょっと趣が違い、SFよりです。キャラクターや舞台を借りて、「夢(虚構)と現実」をテーマに描かれた押井版『うる星やつら』です。
正直子ども(小、中学生でした)のころ見た時は展開にまったくついていけず、『うる星やつら』を見ているのに全く別の映画をみせられているような、そんな感じでした。ちょっと対象年齢は高めだと思います。大人になってからオーディオコメンタリーを交えながら見ると、押井監督がこの映画でどんなことを描きたかったのかよく見えてきました。
物語前半の「学園祭前日」が毎日繰り返される、学校から家に帰ろうとバスや電車に乗っても気が付くと友引町に戻ってしまう、友引町の外に電話をかけてもつながらないなどのシーンはサスペンス色が濃厚で、見ていてドキドキします。ストーリー以外では、監督がエッシャー的な表現にチャレンジした、水たまりに青空が映る登校シーンや、しのぶが路地に迷い込むシーンが印象的でした。
先にこの映画は押井版『うる星やつら』と書きましたが、原作自体9年間の連載の中で時間は経過せず、主人公たちは高校2年生のまま。ある意味大人になりたくない青少年には「夢」の世界で、この映画はそんな原作をもっと端的に表しているのかもしれないなとも思います。初めて見た当時は「こんなのうる星やつらじゃないし、わけがわからない!」と思いましたが、同じく現実と虚構をテーマに作品を作られる今敏監督を好きになった今では見方が変わり、好きな映画の一つです。
アニメ原作の映画ということで、この先この映画を見る人は少ないかもしれませんが、埋もれてしまうには惜しい作品だと思います。