ぐいぐい作品世界に引き込まれる94分間
『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(Little Shop of Horrors)
■監督フランク・オズ
■主演
リック・モラニス
■DVD/Blu-ray発売元
ワーナーホームビデオ
■おすすめの理由
本作はコメディ、ホラー、ミュージカルが融合したファミリー向け映画です。
作品には面白い経緯があり、61年にB級ホラーの帝王、ロジャーコーマンが撮った同名作品が、82年にオフブロードウェイでミュージカル化され、さらに86年に再映画化されたのが本作です。
魅力一つ目は総合的な完成度の高さ
脚本は恐らく相当綿密に計算されたもので、正味94分間に一部の隙もない密度の高さ、テンポ、スピードでぐいぐい作品世界に引き込みます。魅力二つ目は音楽
作曲はアランメンケン、作詞はハワードアッシュマン。二人は後に第二次「ディズニールネサンス」で音楽担当の立役者となるコンビです(89年『リトルマーメイド』に始まるディズニー映画の長い停滞期からの復興)。
本作で初めて二人が組み、声がかかった経緯があります。
魅力三つ目はパペット
CG全盛の現在ですが、本作の怪物オードリー2.はパペットで動き、アナログながら独特のいい味を出しています。本作が上手くコメディ要素を獲得できたのはこの技術の素晴らしさに因る部分が大きい気がします。
本作を久しぶり観直して感じたことが二つ
■一つは作品のテイスト本作はミュージカルですが、コメディ、ホラー要素が詰め込まれ多分に変化球的な印象を受けます。
これはミュージカルの本場米国ですらもはや直球(ミュージカル単体)勝負では容易に客を呼べなくなっていたことを表し、またジャンルの融合(言い換えればネタ切れ)が始まった年代であるのを感じさせます。
■もう一つは80年代以降の特徴的な作り
メッセージ性が希薄になったのを補うかのように、脚本の密度とテンポの良さで一気にみせるような展開の作品が増加しました。
これは80年代以降の特徴で、まるでジェットコースターに乗っている気分です。
頭を空っぽにストレス無く楽しんで観られるスタイルの確立は、世界中で受け入れられ、ハリウッド映画が世界市場を拡大させた理由の一つだと感じました。