映画/口コミでおすすめの戦争・歴史映画(洋画)

人間の狂気の恐ろしさ「フルメタルジャケット」

鬼才キューブリックによるベトナム戦争を題材にした作品です。無慈悲に客観的に淡々と戦争が引き起こす狂気が描かれています。ドンパチだけが戦争じゃない、戦争の恐ろしさ、汚さ、人間の狂気の恐ろしさをオブラートなしに知らしめる、一度見たら忘れられない作品です。

投稿記事

ベトナム戦争を真っ向から描いたキューブリック作品

■作品名
フルメタル・ジャケット (1987 アメリカ)

■監督
スタンリー・キューブリック

■出演
マシュー・モディーン

■DVD/Blu-ray発売元
ワーナー・ホーム・ビデオ

■おすすめ理由
鬼才キューブリックによるベトナム戦争を題材にした作品です。
戦争映画の中には、友情や美談など戦争時においても失われなかった人間性を描いたものも多いのですが、この映画はさすがにキューブリック作品だけあって、無慈悲に客観的に淡々と戦争が引き起こす狂気が描かれています。
キューブリック自身も、これは反戦映画として撮ったのではない、ただ戦争そのものを描きたかったとコメント遺しているように、その目線はあくまでクール。

この作品で特筆すべきは、前半の戦地に赴く前の海兵隊のキャンプでの鬼軍曹ハートマンによる厳しいなんてものではない凄まじい訓練の様子。
なかでも太っていてちょっとスロウな訓練生レナードを巡る殴る蹴るの体罰、叱咤、罵倒、そして連帯責任による懲罰とそれに端を発する訓練生同士でのいじめと暴力。
閉塞的な空間で訓練生達の心身が追い詰められて、人間性を失っていく様子は、見ている私達の心をもぎゅうぎゅうと痛めつけ、絶望的な気持ちにします。
鬼軍曹ハートマンを演じるリー・アーメイは、本当に海兵隊の元教官だったそうです。
当初は演技指導者のはずでしたが、リアリティを求めたキューブリックにより、そのまま教官役として抜擢されたという筋金入り鬼教官ぶりは圧巻です。
鬼教官ハートマンと訓練生レナードの悲劇的な行く末と後半戦場で見せる兵士達の狂気。どちらも絶望的な気持ちにさせられて、とにかく見たあとは気分が落ち込む作品でもあります。
でも戦争というのは、そういう絶望的で救いのないものなのだ、ということをキューブリックは真っ向から描いたのだと思います。

戦闘シーンは戦争映画としては少ないものの、ドンパチだけが戦争じゃない、戦争というものの恐ろしさ、汚さ、戦争によって引き出された人間の狂気の恐ろしさをオブラートなしにガツーンと見ているものに知らしめる一度みたら忘れられない作品です。


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