高い利子収入や売却益を目指して運用されている割には
保守的な運用スタイル
通貨選択型投資信託のブラジルレアルコースやブラジルの株式を投資対象とする投資信託を含めれば、ブラジルに投資する投資信託はたくさんありますが、純資産総額が1番大きな投資信託は、大和証券投資信託委託が運用する「ブラジル・ボンド・オープン(毎月決算型)」です。2013年9月13日現在の純資産総額は約5708億円です。この投資信託は、ブラジルレアル建て債券に投資されます。固定利付国債および割引債の組入比率の合計を、純資産総額の50%以上とすることで、高い利子収入と売却益の確保を目指して運用は行われています。
設定は大和証券投資信託委託となっていますが、ブラジルレアル建て債券の運用は、イタウ・ウニバンコ銀行の運用部門であるイタウ・アセットマネジメントの助言を受けて運用が行われています。
投資対象となる債券は、政府、政府関係機関、国際機関等が発行する公共債となっていますが、2013年8月30日基準のマンスリーレポートによれば、国債が98.5%、コール・ローン、その他が1.5%となっています。コール・ローンなどの短期金融商品を除けば、実質国債だけで運用されていることになります。
債券の格付別構成は、100%シングルAとなっていることから、信用リスクを取っていないことがわかります。高い利子収入や売却益の確保を目指して運用されている割には、保守的な運用スタイルの債券ファンドといえるでしょう。
毎月の分配金は、2009年9月決算期から1万口当たり120円が支払われ続けています。
毎月の分配金を利子収入等で賄う割合は低い
1万口当たり毎月120円という高額の分配金が4年以上も支払われ続けていることが、ブラジルレアル建て債券で運用される投資信託の純資産総額第1位である要因と考えられますが、今後も高額の分配金を支払い続ける余裕はあまり高いとはいえないようです。大和証券投資信託委託が運用する毎月分配型投資信託の大多数は、分配金の概況が細かに、また過去1年分掲載されています。情報開示として立派な姿勢といえます。余談ですが、他の運用会社も見習うべき姿勢と思われてなりません。
話を元に戻すと、ブラジル・ボンド・オープン(毎月決算型)の第57期、2013年8月26日決算期の1万口当たりの経費控除後の配当等収益は1万口当たり52円となっています。毎月の分配金は同120円ですから、120円-52円=68円は分配対象額から取り崩されていることがわかります。
第57期の52円という配当等収益は多いのか少ないのかと問われれば、同期を含む過去1年分の配当等収益の平均は約56.33円ですからやや少なめといえるでしょう。直近3ヵ月の分配金が平均を下回っていることから、レアル売りの影響を受けたのだと考えられます。
直近3ヵ月が平均を下回っていることから、過去1年分の平均分配金56.33円をベースに考えると、毎月の分配金120円-56.33円=63.67円を取り崩していることになります。
分配金を支払う余力は高くない
マンスリーレポートによれば、第57期決算後の分配金対象額は1万口当たり893円。仮に過去1年平均と同額の63.67円ずつの取り崩しが行われ続けたとしたら、893円÷63.67円=14.02ヵ月。現状の運用状況が続いてしまうと、1年強で分配対象額が底を付くことになります。2013年4月決算(第53期)後の運用報告書を見ると、第51期に1万口当たり285.67円、第53期に同333.24円の有価証券売買益が計上されていることがわかります。今後もこのような売買益を計上できればいいのですが、さらなる問題があるように見受けられます。
マンスリーレポートの組入上位10銘柄の第1位、利率10%の固定利付国債が2014年1月1日に満期償還を迎えることになっています。組入比率は21.9%ですから、8月30日現在の純資産総額から推測すると約1164億円の投資額になります。約1164億円もの資金が高利率の公共債に乗り換えられるのかは未知数だからです。
ブラジルレアル安が再び加速すれば、4年以上も続いてきた高額の分配金が減額される可能性も否定できないと思われます。