インパクトのある写真と、食物連鎖という大きな視点
群馬県立ぐんま昆虫の森に勤務され、昆虫写真家としてもご活躍の著者筒井学さんは、この本のために、5年をかけてオオカマキリの一生を撮影されたそうです。どのページのカマキリも、まるで目の前にいるかのように生き生きとしていますが、中でも特に印象的な写真をご紹介します。
まずは、交尾中に、空腹になったメスがオスを頭から食べてしまっている写真。
また、ハリガネムシに寄生され、水辺で死んでいくカマキリの写真も載せられています。
これらはカマキリの生態を説明するのには欠かせない事がらですが、子ども向けの資料で、ぼかさずにはっきりと述べられているのは珍しいことと言えるでしょう。大人でもハッとするような、インパクトのある写真です。
また、カマキリが潜んでいる広い草むらの写真。
いかにも春らしい気持ちのよい写真ですが、まばゆい光や濃い緑に、むせるくらいの生命力が感じられます。この本が、カマキリという昆虫に焦点をしぼりながらも、カマキリだけでなく、食物連鎖という仕組みを通して、自然そのものや生きるということに向き合っているということが伝わってくる1ページです。
優しく柔らかく解説しているわけでも、かわいらしく擬人化しているわけでもない。『さすらいのハンター カマキリの生きかた』は、どちらかといえば大人びた視点の写真絵本かもしれません。
けれど、決して子どもだましではなく、ありのままを写し説明しているからこそ、終わりある命の悲しさと、最期までしっかりと生き切るカマキリの強さが、胸にせまってくるのではないでしょうか。
秋の夜長にぜひ、お子さんとお楽しみください。
もしもっとカマキリに興味が出てきたら…… >>