正月料理の代表格・雑煮は、それぞれ「我が家の味」がある
雑煮とは
1600年代初頭に編纂された『日葡辞書』の「ザウニ」の項には「正月に出される餅と野菜で作った煮物」とあります。上流貴族の雑煮は干しアワビや干しなまこなどで出汁をとり5種や7種の具で作り、餅は固いので食べずに、上の具を少々と汁だけを食す、というのが作法だったよう。庶民は、餅や里芋、大根、青菜、豆腐といった具合。江戸時代のベストセラーレシピ本『料理物語』では「中みそ又すましにても仕立て候 もち とうふ いも 大こん いりこ くしあはび ひらがつほ くきたち(カブなどの葉)など入るよし」と雑煮を紹介しています。雑煮は、私たちの暮らしの中で消滅することなく紡がれてきた貴重なハレの行事食の1つといえるでしょう。雑煮は神様と共にする特別な食事(神人共食)。元旦の早朝などに「若水」と呼ばれる汲みたて水で作ります(年男の役目の地域も多数あり)。今でも京都・八坂神社では元旦に【若水祭】が行われ、人々が正月の雑煮や大福茶のために水をもらいに参詣します。
■丸餅か角餅か
東の角餅、西の丸餅
雑煮になくてはならない「餅」。その形にある程度の共通性をみることができます。大別すると東日本は角餅、西日本は丸餅。東西は一般的に、富山・岐阜・愛知の三県以西を西日本というふうに分けられます。同じ県内での混在型もあり、石川県は能登は角餅で加賀は丸餅、山形県や三重県、佐賀県も同様の傾向があるそうです。北海道については、入植者の出身地によって違うそうで、さらに複雑。
■焼くか煮るか
あなたのお宅は雑煮用のお餅焼きますか、煮ますか
ここひときわ異色を放つのが、香川県。高松地方では、あんこ入りの丸餅を雑煮に入れることで有名です。
■すましか味噌か、それとも小豆か
餅の次には、その味付けの違いを地域という点から見てみましょう。東日本、中国・四国・九州地方は概ねすまし、北陸は福井の赤味噌を除きすまし、近畿地方は白味噌、島根県と鳥取県は小豆汁。ダシはかつおや煮干し、昆布が大半ですが、特産物によってあごだしや焼きエビといった特別なものを利用する地域も。
次のページでは、日本各地の特色ある雑煮を見てみましょう。