物価水準や賃金水準の変動の影響(2)~在職老齢年金のしくみ
年金と賃金を調整する在職老齢年金制度も変わります
60~64歳までの在職老齢年金は、老齢厚生年金の12分の1と年収の12分の1(「総報酬月額相当額」といいます)を合計した「基本月額」と総報酬月額相当額から以下のフローチャートをたどり、該当した計算式から支給停止する年金額を計算します。
65歳以降の在職老齢年金は、基本月額が支給停止基準額の「48万円」を超えると年金の一部が支給停止されますが、60~64歳までの在職老齢年金と同様に、今年度の支給停止基準額は「47万円」となります。なお、65歳以降は老齢厚生年金と老齢基礎年金が支給されますが、基本月額の計算に老齢基礎年金は含まれず、支給停止の対象にもなりません。また、70歳以降は厚生年金の被保険者資格を喪失しますが、70歳以降も仕事を続ける場合は在職老齢年金のしくみによる年金額の支給停止は継続されます。
平成16年の年金制度改正以降、年金額の見直しは物価水準の変動だけでなく賃金水準の変動も考慮して行われ、計算のしくみがより複雑になりました。さらに、年金改正以前の物価スライド特例による物価水準と年金の支給水準の格差がまだ残っている影響もあって、複雑さを増しています。年金制度の改正以前は完全自動物価スライド制により、物価の変動が年金額にダイレクトに影響して平成15年度・平成16年度はデフレの影響から年金額が引き下げられました。現在の制度では前年度のように物価水準が+1.4%でも年金額が据え置かれたということがある半面、今年度のように物価水準が▲1.4%でも年金額が据え置かれるということもあります。改正以前の年金制度はインフレのみに対応した制度でしたが、改正後の年金制度はデフレにも対応した制度になっているといえるでしょう。老後の生活を今後も安定的に支える制度として、公的年金制度は心強いセイフティネットの1つであることは確かであるといえるでしょう。
※この記事は、掲載当初協賛を受けて制作したものです。
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