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【症例画像も】深爪・爪噛みなどによる爪の変形・治療法

【形成外科医が解説】爪噛み・押し爪などの爪をいじる癖や深爪は、爪だけでなく皮膚に影響することも。爪をいじる癖の種類、症状・症例画像、病院は何科を受診すべきか、対処法、最新の治療法について解説します。

執筆者:野田 弘二郎

爪いじり・爪噛み癖が招く爪トラブル

名刺交換風景

癖による爪の変形が日常的なちょっとした動作、例えば名刺を交換する、つり銭を受け渡すなどのときに人目が気になり社会生活上差し支えるという悩みも多い。

貧乏揺すりや指をポキポキ鳴らすなど、誰しもが何かしら持っている「癖」。イライラした時などについつい爪を噛んだりいじったりしてしまう人も少なくありません。

爪をいじる癖は、他のよくある癖以上に、その動作自体が周りに精神的に未熟な印象を与えてしまうと気にする方も多いです。しかし医学的にはそれ以上に、爪に変形を残してしまう危険がある点は無視できません。

爪噛みなどによる爪の変形は、名刺交換やお勘定などの日常のちょっとした動作の際に目だってしまい、人目が気になって社会生活上差し支えるという悩みも多く聞きます。特に営業職や飲食業などに就いている場合は、仕事上でも深刻な悩みになってしまうようです。
 

爪噛みによる症状・爪の変形

噛み爪の症例写真

噛み爪による極端な深爪で拡大すると先端部分がギザギザ。この状態が長く続くと爪の下の爪床という皮膚の部分まで短くなり指先がポテって丸くなってしまう

爪をいじる癖には、
  • 爪を噛む(いわゆる「爪噛み」)
  • 爪を剥がす
  • 爪の付け根をこすったり押したりする
などがあります。もっとも多いのが「爪噛み」で、爪の先端を噛み切ってしまう癖。爪噛み癖がある人の爪は、極端な深爪で、爪の先端部分を拡大して見ると歯形によりギザギザになっているという特徴があります。

また、全ての手指全部を同時に噛んでしまうことが多く、体の柔らかい子供に至っては足の爪にも同じ症状が見られることがあります。

癖が長期間に渡って続くと、爪の下の「爪床」という皮膚の部分まで短くなっていき、結果として指先がポテっと丸く不格好になってしまいます。成人の場合、自分自身で悪い癖であることをよく認識しているもののなかなか止めることができず、また治療を受けるきっかけがなく、独りで悩んでいる方がほとんど。就職を機に、あるいは家族に勧められるなどで相談に来られる患者さんが多いです。

 

押し爪による症状・爪の変形

押し爪の症例写真

爪を押す癖で爪に洗濯板状の横筋が入る。爪の半月が大きく、ささくれ(さかむけ)をむしる癖のために爪周辺の皮膚が常に赤くただれている。

爪噛みだけではなく、「爪押し」という癖もあります。爪の根元である爪半月付近を繰り返し押したり、指の腹でこすったりしてしまう癖です。

この癖によって、爪に洗濯板状に連続した横筋が入ります。爪半月部分には爪を作る細胞である「爪母」がありますが、押し爪によってこれが障害されるため、変形が起きてしまうのです。また、爪の付け根の皮膚を根元方向に押すため爪の半月が異様に大きく見えてしまうのも特徴。ほとんどの場合、ささくれ(さかむけ)をむしる癖を伴うため、爪周辺の皮膚が常に赤く、荒れています。ひどい場合は爪自体をむしったり、剥がしたりして出血を伴っているケースもあります。

爪押しの場合、爪噛みと違って本人が自身の癖による変形であることに気がついていなかったり、癖であることを隠そうとしてしまうことがあり「ばい菌による変形」といった相談で、皮膚科を受診してしまうことが多いのも特徴です。爪に関する癖について十分な知識のない医療機関だと、抗菌剤や保湿剤が処方されることが多いようです。こうなると一向に変形が改善せず、複数の病院を次々に受診してしまう患者さんも少なくありません。

 

爪いじりの癖を止めたい……直し方と治療法

自分の体をいじる癖が固定してやめられなくなる状態は「神経性習癖」と呼ばれます。幼児の指しゃぶりがこれにあたりますが、指しゃぶりがリラックスした時によく見られるのと異なり、爪に関する癖はイライラしている時に出やすいのも特徴。緊張や不安などの心理的な不安定さから引き起こされる行動で、精神的な緊張を和らげる手段と考えられます。

爪に関する癖は、指しゃぶりよりも年長の4~5才頃から始まり、ピークとなる10才頃では15%の子供に見られますが、多くは自然に見られなくなります。ただし思春期以降に始まったり、成人まで持ち越したりした場合はなかなか抜け出せなくなります。

■爪をいじる癖の止めさせ方:小児の場合
子供の場合、精神な未熟さ、集団への適応の問題などの背景があった上での癖ですから、叱りつけて止めさせるのは極めて困難なことです。
  • 家族や教師と相談しながら不安や不満の原因を見つけて取り除く
  • 躾用に市販されている苦み成分を含むマニキュア(バイターストップなど)を塗る
  • 深爪や不潔の危険について話して聞かせる
  • 児童心理士に相談する
などの治療法があります。ただし、自然と無くなることも多いのでしばらくは見守る姿勢も大切です。また、思春期に入り爪の見た目が気になってしまう場合は次項の「成人の場合」に準じて治療を行うこともあります。

爪をいじる癖の治療法:成人の場合
成人の場合、社会への適応を最優先に考えます。爪の変形が、仕事上など人目に触れるシーンで問題になってしまうことが多いので、まずは見た目の改善を行います。

短くなった爪をアクリル樹脂で長さ出しをしたり、爪の表面に凸凹のキズがある場合はそれを埋めるなどの施術を行います。保護された状態で爪が伸びるのを待っていると数ヶ月で爪は正常になります。その後も爪いじりをしてしまわないよう、爪の表面に硬いアクリル樹脂を塗って保護する方法なども選択できます。

これを数ヶ月~数年つづけることで癖から抜け出せる方も多くいます。不十分な場合は精神科や心療内科で相談し、リラックス法や代替え療法を試みることも効果的です。いずれにしても根気強く治療に取り組む必要があります。
 

変形した爪の症例画像・治療法・治療経過

■噛み爪による極端な深爪からの治療
噛み爪施術前中後写真

噛み爪の施術経過写真

左:噛み爪による極端な深爪の状態。
中:治療開始同日。アクリル樹脂により通常の長さに延長した爪。樹脂は硬く容易にはかみ切れない。
右:治療開始後2ヶ月。自爪が先端まで伸びて正常に戻った状態。今後は自信がつくまでアクリル樹脂による爪の保護を続ける。

■押し爪により横筋が入ってしまった爪の治療
押し爪施術前中後写真

押し爪の施術経過写真

左:爪に連続した横筋。周辺の皮膚が常に赤くただれている。
中:治療開始同日。アクリル樹脂により爪の凸凹が埋められた状態。一見正常に見えるため仕事等への影響はすぐに解消される。男性の場合はツヤのない仕上げにすることも可能。
右:治療開始後6ヶ月。自爪が先端まで伸びて全く変形の無い状態に戻っている。周辺に皮膚の状態も正常化している。
 

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