タイミングよくビルの補修工事が始まる
ガイド:今回発表された『Deep Architecture』は、ラストの曲がタイトル曲。僕たちの周りにある「音」がテーマになっていますが、中野さんならではの着眼点だなぁと感じました。やはり周りの音には普段から敏感なのでしょうか?
Deep Architecture (Amazon.co.jp)
中野:
空調ノイズをはじめ、スタジオで響くあらゆる環境音は重要な要素になっていますね。今回はタイミング良く(?)、レコーディング開始と同時にスタジオの入っているビルの補修工事が始まりまして、足場設置のカンカン叩く音やコンクリート打音検査のトントン叩く音、ドリルの回転する音たちがそのままマイクに回り込み、今回のアルバムのキーとなるインダストリアルなサウンドとして収録されています。環境音も楽器音も自分の中では同じ感覚で扱っています。特に楽曲「Deep Architecture」ではスキャナーやプリンターの音、自分が「シェルター」と呼んでいる避難はしごを叩く音、電子レンジのブザー音やガステーブルの点火音を、短波ラジオやサイン波などと同じようにソロパートとして登場させています。ちなみに、スキャナーが「レ」の音、電子レンジのブザーが「シ♭」といったように偶然にも曲に調和していますね。
LONG VACATIONのセルフカヴァー
ガイド:「Legs」は、中野さんが在籍したLONG VACATIONのセルフカヴァー。「Legs」というタイトルを聞くと、どうしてもThe Art Of Noiseを思いだしてしまうのですが、中野さんが作詞作曲したこの曲はLONG VACATIONの中でも割と異色な曲ではないかという個人的印象があります。「Legs」を選曲した理由は?
中野:
元々「Legs」は、LONG VACATION結成以前に個人的に作曲してあったものでしたから、LONG VACATIONの中で演奏するにはかなり浮いていたのではないかと思います(笑)。この曲はソロ活動を始めてからもライヴでレパートリーとして演奏してきていて、スタジオ録音版として発表する機会を伺っていました。ライヴ的な要素を生かしつつ、スタジオ版ならではの細かい部分での演奏表現が出来たと思います。ちなみにThe Art Of Noiseの「Legs」は特に意識していませんでした(笑)。