BMW/BMWの車種情報・試乗レビュー

新時代の到来を告げる唯一無比のi8

CO2排出ゼロを最終目標とした新しいモビリティの提案である、BMWの新サブブランド“ i ”。そのエモーショナルでダイナミックな新しいプラグインハイブリッド・スポーツカーがi8です。お披露目を前に、生産型プロトタイプで新時代の走りを体感してきました。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド

イーサンとほぼ同じスタイルのクルマに乗れる

BMWi8

サブブランド“ i ”のプラグインハイブリッド・スポーツ、i8の生産型プロトタイプ。フロントにモーター、リアにエンジンを配している

南仏はプロヴァンス地方、ミラマにあるBMWグループのプルービンググラウンドには、計4台のi8生産型プロトタイプが取材陣を待ち受けていた。全車、唐草模様、じゃないけれど、そのような青いカムフラージュフィルムを全身に貼られていたが、その特徴的なフォルムを隠し通すことができない。

見ための全体の印象は、6シリーズをずっとスリムにした感じ。BMWのクーペらしいフォルムだといえば、らしい。コンセプトカーから想像していたよりも全高が高くみえる。居住性を考えたのだろうか。車幅はかなり広く、スリーサイズを見ると、ほぼM・ベンツSLS AMGなみだ。フェラーリ458を少し長くして、高くした、もしくは、アウディR8を2+2ロングホイールベース版に仕立てた、といった具合である。

低く抑えられたノーズが、フロントアクスル周辺にエンジンやラジエターなど大きな機械類のないことを物語っている。ノーズの先端には、平べったくつぶされたキドニーグリルが収まっているが、下方が2割、指1本分ほど開けられて、そこが送風口になっていた。

バンパースポイラーのグリルも塞がれている。こちらは自動調節のアクティブフラップで、必要に応じて開閉し前輪用ブレーキを冷やすという。アルミニウム製ボンネットフードは、今回はじめて、ノーズ先端まで伸ばされた。

ドアは昆虫の羽のように開くスイングアップタイプだ。外側のパネルはアルミニウム製で内側がCFRP製となっているが、開閉フィールはとても軽い。まさに、“スイング”といった感覚で、いかにもダンパーの力を頼りにする既存スーパーカーのそれよりも、数段、軽い操作フィールであった。

リアセクションの造形は、生産型i8のハイライトのひとつだと思う。往年のベルトーネBATを彷彿とさせる形状で、既出のフランクフルトショーカーそのものといった風情。

事実、BMWはi8コンセプトを披露した際、スタイリングはほぼ90%このままのカタチで登場する、と既に広言していた。そう、見ため的には、イーサン(ミッションインポッシブル5のトム・クルーズ)とほぼ同じクルマに乗る事ができるというわけ! 常識的な車高になり、ガラスエリアがずっと狭くなる以外、コンセプトカーそのままのカタチだろう。

BMWi8

ボディサイズは全長4689mm×全幅1942mm×全高1293mm。ホイールベースは2800mmとなる

BMWi8コンセプト

2011年にお披露目されたi8コンセプト

こんな風にi8のスタイルを肯定的に書くと、「とはいえ、これはやり過ぎじゃないの?」という声も必ず上がりそうだ。けれども、よく考えて欲しい。新ブランドの“ i ”はBMWの基軸ラインナップシリーズではない。これくらいの挑戦はむしろ当然で、好き嫌いのハッキリ分かれることの方が望ましいと思う。

リアランプまわりのデザインには面白いアイデアがありそうだったが、カムフラージュでよくわからなかった。小さなダックテールの前はガラス製のハッチゲートで、開けると154リッターの荷室が用意されている。機内持ち込みサイズのケースなら問題ない。ミドシップスーパーカーのフロントブートレッグ程度の容量だ。

ちなみに、キャビンとエンジンルームを遮るリアの小さなガラス窓は、ゴリラガラスといって、スマホ用のケミカルガラスと同じもの。非常に強く、軽い素材である。今後、ノーマルラインナップにも適用範囲を拡げていくとのこと。
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