テーマは「女の子よ、大志を抱け!」

Photo Jun Wajda

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「歌手になりたい」という夢を抱いて、NYにやってきたエフィー、ディーナ、ローレルの3人組は、スター歌手ジミーのバックコーラスを勤めることに。マネジャーのカーティスに見込まれ「ドリームガールズ」として独立し、成功への階段を駆け上がりますが、エフィーは美形のディーナとのリードボーカル交替を命じられ、さらに愛するカーティスが自分からディーナへ乗り換えたことを知ります。失意の彼女は故郷に帰り、ソロ歌手として再起しますが、カーティスは裏金を使って邪魔立て。怒ったエフィーは……。そして、自分を商品としてしか見ないカーティスに落胆したディーナ、ジミーの甘い言葉に乗せられて不倫関係を続けていたローレルは……。

60~70年代の音楽業界を舞台に、3人の女の子たちの青春の軌跡を描いた『ドリームガールズ』は、当時芽生えていた「ウーマン・リブ(女性解放)」の要素を盛り込み、ヒロインたちが表面的な成功の「その次」へと、潔く踏み出してゆくまでをテンポよく構成。終盤、主人公たちが過去にしがみつく男たちに「倍返し」(?!)をする場面は痛快そのもので、華やかなエンディングまで一気に楽しめる作品です。

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こってりしたR&Bを中心とするナンバーは「これってジュークボックス・ミュージカル(既存のヒット曲を集めてストーリーをつけたミュージカル)?」と錯覚するほど粒ぞろいですが、実際にはすべてヘンリー・クリーガーによる作曲。白人ながら、10代のころからブラックミュージックが大好きだったという彼の音楽的ボキャブラリーが、フルに生かされています。特に2幕のノリノリのポップソング「ワン・ナイト・オンリー」は、シングルカットされるや世界的にヒット。ショーを観ながら「あ、聴いたことある!」と思われる方も多いことでしょう。

「レトロ」と「スタイリッシュ」が交錯する今回の演出

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初演のマイケル・ベネット(『コーラスライン』)のスピリットを引き継ぎ、今回のプロダクションを演出しているのは、『スカーレット・ピンパーネル』やヘンリー・クリーガーの近作『サイド・ショウ』を手掛けたロバート・ロングボトム。背景一面の巨大な電光パネルに、ポップな幾何学模様や映像を音楽と連動して映し出し、ゴージャス、スピーディーに物語を運びます。特に見逃せないのが、1幕で男たちが裏工作に励むナンバーの後半で、ダンサーたちが盆舞台に波状に横たわって歌う様子がパネルに映し出される演出。40~50年代に人気を博した華麗な水上ミュージカル映画を思わせ、レトロ感とスタイリッシュさが不思議に同居しています。
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しかし、このショーの見どころは何と言っても、出演者たちのパワフルかつ、ツボをおさえたパフォーマンス。例えば1幕最後に、カーティスに捨てられたエフィーが歌う「And I am telling you I’m not going(それでもあなたから離れない)」は、一歩間違えば単に執念深い女を印象付けてしまいかねない、5分間の大曲なのですが、筆者が観た日のエフィー役、リディア・ワーさんは、劇場が揺れている?と思わせるほどの声量で場を支配しながらも、情念をごり押しすることはせず。歌手ジミー役のケルヴィン・ロストンJr.さんも、ライブシーンでの憑依的なパフォーマンスをあくまで物語の中で見せ、全体の流れを遮断することがありません。こうしたキャストたちの絶妙なバランス感覚も、今回の日本公演の成功に一役買っていると言えるでしょう。

最後に小さなエピソードを一つ。実は創作段階では、エフィーは2幕には登場しない、扱いの小さな役だったそうです。それを変えさせたのが、初演のエフィー役、ジェニファー・ホリデイ。台本が気に入らず、ワークショップ(役者を交えた創作過程)を降板してしまった彼女を呼び戻すため、ストーリーが大きく書き換えられたのだとか。エフィーの紆余曲折無しの『ドリームガールズ』が考えられない今となっては、ジェニファー・ホリデイのこの「強気」こそが、本作を『ドリームガールズ』たらしめたと言えるかもしれません。

*公演情報『ドリームガールズ』上演中~2013年8月25日=東京・シアターオーブ 8月28日~9月1日=大阪・フェスティバルホール http://theatre-orb.com/lineup/13_dreamgirls/
*観劇後はディーナ役をビヨンセが演じて話題になった映画版『ドリームガールズ』(2006)を楽しむのもいいかもしれません。エフィー役の新人、ジェニファー・ハドソンも、アカデミー賞助演女優賞を受賞し、一躍スターの仲間入りを果たしました。監督のビル・コンドンは今年、ヘンリー・クリーガーの『サイド・ショウ』舞台版を演出する予定です。

 





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