政治関連の貴重な品々も
ユニークな小話から政治関連の話題まで幅広い知識に精通しているガイドの方
アイルランドの20世紀はまさに激動と言うにふさわしいといえるでしょう。700年以上にわたるイギリス支配から、北6県をのぞく形ながらも独立を果たしたことが意味することの大きさは、はかりしれません。このミュージアムには、そんなアイルランドの歴史を物語る貴重な品々も収蔵されています。
ケネディ大統領が使った物も
ケネディ大統領がアイルランドに来た際に使用した楽譜スタンド
アイルランド系移民の子孫が多いアメリカ。カトリックではじめてアメリカの大統領になったケネディ大統領もアイリッシュ系です。「ケネディ」はアイルランドの名字のひとつで、アイルランドにはケネディさんもいっぱいいるので別にめずらしくもないのですが、「ケネディ」という名字の人に出会うと、ガイドは未だに「大統領と一緒!」と少し興奮してしまいます。
それはさておき、2013年で死後50年を迎えたケネディ大統領。実は亡くなる数ヶ月前にアイルランドに来てるんですね。その演説の際に使ったのがこちら。アイルランドには原稿を置く専用の台がなく、この楽譜スタンドを使用したそうですよ。
The Nelson's Pillerの写真
The Nelson's Pillerのそばには、中央郵便局の建物も
ダブリンのオコンネルストリートにあり、空に突き刺さるように伸びる光のモニュメントスパイア。こちら、同じ場所にかつては19世紀初頭に建てられた「The Nelson's Piller」というモニュメントがあったそうです。
イギリスの海軍提督の名前が冠されたモニュメントだったのですが、その後1966年にアイルランド全土の独立を支持するリパブリカンに爆破されなくなり、2003年に同じ場所にスパイアが建てられたそうです。つい50年ほど前は首都のメインストリートでこのようなことが起こりうる時代だったということが伺えます。
またそれだけでなく、写真をよく見るとThe Pillerの周囲に駐車場があったりと、当時の面影はありつつも現在と異なる部分も見受けられます。現在のオコンネルストリートと見比べてみると面白いですよ。
独立戦争のためにアメリカで売ったアイルランドの国債
独立戦争を資金面で支えることとなった当時の国債
後にアイルランドのティーショック(首相)になるエイモン・デ・バレラ。彼は1917年頃にアイルランドの独立戦争のファンドレイジングのためにアイリッシュ系移民の多いアメリカに行ったのですが、この際に発行されたアイルランドの国債も残っています。
年代ごとにまとめられた収蔵品。中央の肖像画はエイモン・デ・バレラ
失敗に終わりながらも独立への気運を高める事になったイースター蜂起で、リーダーたちが全員処刑される中、生きのびたデ・バレラ。お父さんはアイリッシュではなく、お母さんがアイリッシュ系という家系で、ニューヨークで生まれているためアメリカの市民権があったわけです。一説では、このアメリカの市民権を持っていたために処刑を免れたのではともいわれています。
アイリッシュ系移民の多い、デ・バレラのもうひとつの母国アメリカ。その地でこの国債を売りさばき、かなりの額を手に入れたともいわれています。
イギリスと交渉のテーブルについた際の貴重な資料も
オーモンドキーにある法律事務所から偶然出てきたという独立に関わる貴重な資料
こちらは、イギリスからの独立問題の交渉の際に、ドイル・エアラン(アイルランド議会)から交渉団をロンドンに派遣した際の英語、アイルランド語の2カ国表記の書類。アイルランドに5部しか残らない貴重な資料で、このミュージアムでも歴史的にもっとも重要度が高いものだとか。エイモン・デ・バレラのサインも右下にあり、また交渉団の中には当時財務大臣、そして独立戦争のリーダーとして手腕を発揮し、アイルランドの国民的英雄として語り継がれているマイケル・コリンズの名前もあります。
レトロなものがたくさんあり、ビジュアル的にも楽しめる
今回ご紹介したのは、写真、手紙、書面などの紙モノが中心でしたが、そのほかにも本当に面白いものがたくさんあります。アイルランドの20世紀の歴史がつまったリトルミュージアム、ぜひ訪れてみてくださいね。
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■The Little Museum of Dublin
住所:15 St Stephen's Green
開館時間:9:30~17:00(木曜のみ9:30~20:00)
料金:大人6ユーロ、学生4ユーロ、10歳以下無料