個性で選べるモデルが揃う。2013年上半期、おすすめのヘッドホンは?
いわゆる純オーディオ的な方向性を重視したヘッドホンやイヤホンのなかでも、大注目モデルは年の後半に発売されるケースが多いようです。発表と発売が数ヶ月ずれることも珍しくないため、ちょっと混乱するのですが。その代わりにというわけではないですが、今年上半期はDJ用やBluetooth、重低音追求型などの個性派モデルに何台もの注目機が発売されました。今回採り上げたモデルも、個性はじつにさまざま。それぞれが目指す方向性を中心にご紹介していきます。横一列に並べて優劣を付けるような順位付けにはまったく馴染みません。順位は筆者個人の注目度と個人的な好み、値頃感に左右されるとお考えください。
第5位
圧倒的な重低音再生と煌めく中高音で音楽に浸れる
JVC HA-SZ2000
ここしばらく、重低音ファンのためのヘッドホンが数多く発売されています。このHA-SZ2000もそんなユーザーに向けて開発されたモデルなのですが、実物を見てビックリ。デカい!のです。低音再生は重厚長大が王道、という刷り込みがある世代の筆者には、このデカさと重さ、高級カメラでも使われているハンマートーン仕上げハウジングの格調高さには、文句なく所有欲をそそられるものがあります。本機の特徴は、ケルトン型スピーカーの技術を応用した重低音再生技術「ストリームウーハーDB(ダブルバスレフ)」と中高音ユニットを組み合わせた「ライブビートシステム」です。ケルトン型とは、スーパーウーハーに使用される方式で、ASW(アコースティック・スーパー・ウーハー)などとも呼ばれます。
エンクロージャー(スピーカーキャビネット)の内部に仕切りを設けて内部を2分割し、その分割バッフルにスピーカーユニットを装着。ユニットの前面(背面でも構いません)を密閉型で、背面(前面でも可)を共鳴ポート付きのバスレフ型で構成する。これがケルトン型の基本的な考え方です。外部からはスピーカーユニットが見えず、重低音のみがバスレフポートから放出される形になるのですが、通常のバスレフ方式と比べ、中高音を効果的にカットできるうえ、重低音の再生帯域をさらに低くまで持って行きやすい(詳しく説明すると長くなるので、イメージとしてお考えください)のがポイントです。
本機ではさらに、ふたつのチャンバー(空気室)とポートで低音を順に共鳴させながら放出する、ダブルバスレフ方式も盛り込みました。この方式はより効果的に中高音をカットできるのですが、チューニングが加速度的に難しくなります。筆者も昔、自作のスピーカーで何度か挑戦し、結局好みの低音にならなかったという残念な経験があります。
形状もサイズも限られたヘッドホン内にこんな複雑な機構を組み込んで音をまとめられるとは。その技術力の高さに驚くばかりです。また中高音用には、専用チューニングされた30φのカーボンナノチューブ振動板ユニットを採用。重低音に負けないクリアでエネルギッシュな中高音再生を可能としています。
サウンドですが、量感をたっぷり備えつつ抑制も忘れない重低音と、煌めくような中高音にハッとさせられる、インパクト満点の音作りです。低音の量だけをドーピングした、ボヨンボヨンで芯のない低音とは異なり、アタックがドスッ!!と決まるのです。ただ音の印象的には中高音のキャラクターが(音量ではなく表情が)優っているような気がしました。サイズも含め好みの差が出やすそうな気がしますので、まずは店頭で聴いてみてください。
JVC HA-SZ2000
【主要諸元】
型式:密閉型、ドライバ:55mm/30mm、出力音圧レベル:108dB/mW、再生周波数帯域:4Hz~35,000Hz、最大入力:1,500mW、インピーダンス:16Ω、質量:480g(コード含まず)、ケーブル長:120cm
希望小売価格:2万4675円