知識編ではワークライフバランスが求められている背景について、ご理解いただけたかと思います。今回はワークライフバランスを実現しやすい企業選びとキャリアの身につけ方についてお話します。
両立制度は、どれくらい利用されているかどうかが重要
ワークライフバランスに取り組んでいる、というと企業のイメージアップになり、優秀な学生の採用につながるため、新卒の企業説明会や採用ホームページでは女性の働きやすさや両立制度をアピールする企業は少なくありません。企業のワークライフバランスに関わる取り組みや制度には
・育児・介護休業制度
厚生労働省が認定した子育てサポート企業として内外にアピールすることができる「くるみん」マーク。
・次世代認定マーク(愛称「くるみん」)の取得
・短時間勤務制度
・子の看護休暇制度
・ノー残業デー
・在宅勤務
・フレックスタイム
など、さまざまな制度があります。しかし、本当に働きやすいかを確認するためには制度の有無だけでなく、育児休業の取得率や有給休暇の消化率、女性の既婚率、実際に制度がどれくらい活用されているのかを先輩訪問をして聞いてみるのが一番よいでしょう。
また、こういった制度が充実しているのは大企業だけと考える就活生が多いのですが、2012年に施行された改正育児・介護休業法で常時100人以下を雇用する中小企業も、短時間勤務制度などの義務づけが適用されています。こうした両立制度の充実は採用難の中小企業にとって、優秀な人材の流出を食い止めるための有効な手だてといわれています。
20代のファーストキャリア選びを大切に
しかし、女子就活生の相談を受けていると、充実した両立制度に気を取られ、肝心の社会人としてどんな価値を提供する働き方をしたいのか、どんなキャリアを描いて職業人生40年を過ごしたいかが、ごっそりと抜け落ちている人が多いことを感じます。そこで今一度、思い出してほしいのは、新卒採用は企業にとってその企業の将来の幹部候補(一般職をのぞく)になるということを求められているということです。そして、それらの社員のために企業はなぜ育児休業制度や看護休暇、短時間勤務制度など、両立するための制度を充実させるでしょうか。
答えは優秀な人材を逃したくないからです。
ワークライフバランスは仕事で責任をきちんと果たすことが大前提で、その上での制度の利用だと多くの企業は考えています。
ワークライフバランスの本来の意味は、ワークとライフの相乗効果、「ワークライフシナジー」なのです。つまり、時間当たりの生産性が高い仕事をすることで長時間労働を見直し、生活への時間をつくり、その時間を自己研鑽や家族との時間に使って心身を充実させる。そして「生活=ライフ」でインプットしたことを「仕事=ワーク」に生かし、成果を出す好循環をつくる、いわば「働き方・生き方戦略」です。
就活生はこれらを理解し、職業人生40年を走り続ける基礎体力を身につけられるかという視点をもって、社会人最初のキャリアとなる働き方を考えてほしいと思います。
特に20代、結婚、出産前という女性の人生で一番可処分時間(自分でコントロールしやすい時間のこと)がある時に、どのようなキャリアを身につけるのか。それが、その後の職業人生の方向性を決めてしまうといっても過言ではないと思います。
ワークライフバランスを叶えるキャリアを身に付けるために
これらを踏まえて、将来のワークライフバランスを叶えるためには、以下の心構えをもって職業選択、企業選択をしてほしいと思います。将来のワークライフバランスを見据えて、20代にどんなキャリアを身に付けるかを考えて就活しよう。
1) 女性であっても一人の社会人として、「自分の足で立つ」「自分の人生は自分で責任を持つ」という覚悟をする。
2) 親が一般職や事務をすすめる、友達も受けるからといった理由やイメージだけで、職業を選ばない。特に母親世代の一般職、事務職とは求められる能力、仕事内容が異なってきているということを理解する。
3) 自分の意志で決めるためにも、女性の社会人訪問をし、実態を知る。たくさんの女性社会人の多様な生き方や働き方に触れ、ベターを探すこと。
4)20代はできる限りキャリアを優先して、男女差なくキャリア形成できる職場を探す。
20代のうちにライフイベントを乗り越えられるキャリア、能力を身につけてこそ、将来の充実したワークライフバランスが叶えられます。
就活での職業選び、企業選びの参考にしてみてください。