アニメ史に残る名場面、名ゼリフがちりばめられた作品
『劇場版 エースをねらえ!』
■監督出崎統(でざき おさむ)
■声の出演
岡ひろみ(高坂真琴)、宗方仁(野沢那智)、藤堂貴之(森功至)、竜崎麗香=お蝶夫人(池田昌子)
■DVD/Blu-ray発売元
バンダイビジュアル
本作は実写・アニメ両方を含めた70年代、日本のスポーツ映画の金字塔であり、また日本のアニメ映画史上、最も優れた作品の一つに数え上げられる作品です。
本作は監督自身による同作品の二度のTVアニメ化後、その総集編ではなく劇場用として1から作り直された作品です。
作品はTV26話分を90分弱に凝縮しています。そのため密度の高い作品として知られますが、情報量に過不足がなく、展開は丁寧かつスピーディー、演出は華麗にしてパワフルなので、初めて観る方でも作品世界にぐいぐい引き込まれます。
作品の魅力に挙げられるのはまず、ストーリーの面白さです。70年代邦画スポーツ映画は、スポ根的な精神論を説いたり荒唐無稽な作品が大半を占めましたが、本作はテニスを通じてスポーツ映画が本来目指すべき人間の成長をしっかりと熱く描き上げます。
即ち普遍的なテーマを扱った作品なので30年以上経った今も古びることはありません。
次に出崎作品としての完成度の高さです。出崎監督と言えば、所謂「出?演出」と総称される独創的な数々の技法(止め絵、繰り返しショット、透過光、入射光等々)を駆使してキャラの心理までも表現してしまう独特の演出とその優れた絵コンテで知られました。
富野由悠季氏はリミテッドアニメにおけるもっとも論理的な画面の見せ方と評し、宮崎駿氏は、氏の絵コンテに一目置いていました。
押井守氏は本作でアニメの演出の仕方を学んだと公言し、庵野秀明氏は後に本作のパロディ・オマージュ的に『トップをねらえ!』というこちらもアニメ史に残る名作を生みました。
この様に氏は優れた同業者達にセンスを認められ、影響を与え、敬意を払われた方でした。
その出崎氏が最も脂が乗った時期にある程度の予算・時間をかけて制作できた作品ということで、本作はアニメ史に残る名場面、名演出、名ゼリフがちりばめられています。
そのため観終わった後、名作を観た後独特の高揚感、爽やかさ、元気をもらった気分が感じられ、多くの方に自信を持って勧められる一作です。